5月24日放送の連続テレビドラマ『母になる』(日本テレビ系)第7話が、平均視聴率7.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)を記録。前回の9.5%から1.6ポイントダウンし、同作としてはワーストタイを出してしまった。
9年前に息子を誘拐された主人公・柏崎結衣(沢尻エリカ)、結衣の息子を発見して育てていた門倉麻子(小池栄子)、結衣の友人・西原莉沙子(板谷由夏)といった“3人の母親”の姿を描いた同ドラマ。前回は、麻子が過去に交際相手の裏切りにあったことや、中絶や流産まで経験していたことなどが明らかになった。また、麻子は“完璧な母親”から結婚や出産に対するプレッシャーをかけられていたとあって、精神的にかなり追い詰められていたと思われる。
だが、インターネット上で「どんな事情があったにせよ、人の子どもを黙って育てていたのは許されない」といった麻子への反感が広まり、それも今回の視聴率下降を招いた一因かもしれない。
そんな第7話では、結衣が麻子とわかり合おうと試み、食事会を開くというトンデモ展開も。息子を奪われていた母親が、息子を奪っていた女を受け入れようとするなど、まったく現実的ではない。けれども、結衣がこれまでも健気で前向き、そして優しい女性として描かれてきたことを踏まえると、現実的ではなくともギリギリ“結衣らしい”発想ではある。
しかし、今回はそんな結衣のキャラクターにも“ブレ”が生じた。結衣は麻子の過去に触れ、何の悪意もなく「子どもが欲しいのにできなくて、かわいそうに」と口にしたのだ。ストーリーとしては、この「かわいそうに」という言葉によって、それまでしおらしくしていた麻子が豹変する……といったものだったので、必要なキーワードではあったのだろう。だが、これまで積み上げられてきた結衣のキャラクターを考えると、驚くほど“結衣らしくない”セリフだった。
結衣のように聖人君子的な人間ではない私でも、子どもが欲しくても恵まれない人に対して「かわいそうに」なんて言わない。だから、結衣ならなおさらそんな上から目線の物言いをするわけはないのに、突然“無神経キャラ”に変貌して驚いた。沢尻も、この脚本とセリフに異議を唱えなかったのだろうか。
ただ、「かわいそうに」と言われた瞬間に変化した麻子の表情……小池の演技は見事だった。本当に静かにスーッと表情が消えていく様に、画面越しの私も息をのみ、ハラハラした。残り3話で視聴率2ケタ台に回復できるかは微妙だが、小池の演技は最後まで見届けたいと思える。
(文=美神サチコ/コラムニスト)