不倫やコロナ禍におけるチームの規律違反などが報じられて無期限謹慎処分を受け、処分が解除された直後に、再び不倫が報じられた千葉ロッテマリーンズの清田育宏外野手。チームを解雇され、5月28日に日本野球機構(NPB)から自由契約選手として公示した。
清田は昨年9月末、部外者との会食を禁じるチームの規律を破り、不倫相手の女性と会食するなどしていたが、球団に報告せず、さらに虚偽の説明をしていたことが週刊誌に報じられ、無期限の謹慎処分を受けた。十分な反省が見られると判断した球団は、5月1日に処分を解除したが、実践復帰当日から先の女性とは別の女性と複数回会っていたことが発覚。事態を重く見た球団は契約を解除、事実上の解雇処分となった。
これに対し、元大阪府知事の橋下徹弁護士が、テレビ番組で「球団の内部のルール問題」としつつも、法律に照らして「やり過ぎじゃないか」と指摘。不要不急の外出を禁じたチームの規律に違反したことや不倫について、一定程度の非難は避けられないものの、「球団はやり過ぎ」との私見を述べた。
プロ野球はファンの人気に支えられていることから、違法ではなくても道徳的・倫理的に世間に受け入れられないと判断すれば、球団がそれなりの処分を課すのは当然といえる。だが、その処分内容については、法的な観点も欠かせない。球団の契約解除処分の妥当性について、山岸純法律事務所の山岸純弁護士に話を聞いた。
「プロ野球選手は、日本プロ野球選手会が発表している『統一契約書』を使用しているのですが、法的性質は『委任(業務委託)』に似た内容の契約です。この契約書によると、第26条に『この契約や、日本プロフェッショナル野球協約などに違反した場合、契約を解除できる』と記載されています。プロ野球選手の場合、球団に雇われているわけ(雇用)ではないので、会社員の場合のように『解雇』ではないわけです。
『日本プロフェッショナル野球協約』に違反した場合とは、当たり前ですが『不倫をしたとき』とは記載されていません。そもそも野球協約は、球団やリーグのあり方などを定めているものなので、正直、選手の私生活についてどうのこうの言うものではありません。
では、『契約』に違反した場合とは、どんな場合でしょうか。確かに第17条には、『野球選手として勤勉誠実に稼働し、最善の健康を保持し、(中略)個人行動とフェアプレイとスポーツマンシップとにおいて日本国民の模範たるべく努力することを誓約する』などと記載されています。要するに、“日本国民憧れのプロなんだから、プロらしく私生活もしっかりしろ”といったことが書いてあるわけですが、だからといって不倫が禁止されていると読み取るのは、正直、難しいです。
ものすごい余談ですが、私のような弁護士たちは法律で『職務の内外を問わず、品位を失う非行』をした場合、懲戒を受けるとされているのですが、この『品位を維持する』と、プロ野球選手たちの『日本国民の模範たるべく努力すること』は、なんだか似たような“適当さ”がありますよね。プロなんだから、弁護士なんだから、という理由で一般人より高度な義務を負わされるのは、なんとも言えません(あまり書くと弁護士会から怒られるのでここまでにします)。
清田選手の場合ですが、契約解除はやややりすぎではないでしょうか。この後、野球協約に則って紛争解決が図られるのでしょうが、契約解除が無効と判断される可能性も十分にあると思われます。解除が無効とされた場合、当然、選手として元に戻るわけですから、残りの期間の報酬ももらえるということです」
清田は昨年、2年契約を結んでいる。この後、清田を受け入れる球団が現れなければ、契約解除の妥当性などが争われ、その結果次第では、契約残存期間分の報酬をロッテが支払わなくてはならない可能性もある。プロ野球関係者からは、「ファンからのイメージが悪い清田を受け入れることはリスクが高すぎるので、積極的に受け入れる球団は現れないのではないか」との声が聞かれる。
清田と各球団の動きを注視したい。
(文=編集部、協力=山岸純/山岸純法律事務所・弁護士)
時事ネタや芸能ニュースを、法律という観点からわかりやすく解説することを目指し、日々研鑽を重ね、各種メディアで活躍している。芸能などのニュースに関して、テレビやラジオなど各種メディアに多数出演。また、企業向け労務問題、民泊ビジネス、PTA関連問題など、注目度の高いセミナーにて講師を務める。労務関連の書籍では、寄せられる質問に対する回答・解説を定期的に行っている。現在、神谷町にオフィスを構え、企業法務、交通事故問題、離婚、相続、刑事弁護など幅広い分野を扱い、特に訴訟等の紛争業務にて培った経験をさまざまな方面で活かしている。