AI OverviewsやChatGPTなどAI検索「対策」への誤解…EEATの深掘りが重要?

●この記事のポイント
・グーグルが重視する指標であるEEATからさらに深掘りして、LLMが探索してくるように信頼性を上げる
・LLMの検索結果として引っ張られるためにはストーリー性や文脈性があるコンテンツを用意
・グーグルでのキーワード検索が速いスピードでLLMに置き換わっているという状況ではない
昨年(2024年)に「AI Overviews」をリリースし、一部のキーワード検索について機械学習モデルを活用した検索結果・要約情報をページ上位に表示させるようになったグーグル。先月には米国で「AIモード」をリリースするなどAI検索に注力する姿勢をみせている。世界でOpenAIの生成AIモデル「ChatGPT」などを利用する動きが広まるなか、検索エンジンの利用が減少して従来のSEO対策の有効性が低下したり、ネット関連のサービスを手掛ける企業がサイトへの流入減などの影響を受けるのではないかという見方も出ている。
前編記事では、AIやLLMへの最適化対策として「LLMO」「GEO」「AI SEO」といったキーワードも注目されているなか、SEOとは何が違うのか、また、企業はすぐにでも本格的にLLMOに取り組む必要があるのかを検証した。今回の後編記事では、引き続きLLMOの必要性や、LLMでの検索への対策を検討する上でカギとなる点などを、専門家への見解を交えて追ってみたい。
●目次
LLMOとして対策すべきこと
企業はすぐにでも本格的にLLMOに取り組む必要があるのか。前編記事で、カスタムAI開発などを通じてクライアントの課題解決を行う株式会社Laboro.AIの執行役員マーケティング部長、和田氏は「企業側としての対策は、これまでとあまり変わらないのではないか」「ただ、GEOやLLMO、AIエージェントの仕組みなどを知った上で従来と同じことをやるのと、知らないでやるのとでは、対策の仕方や結果は微妙に変わってくるとも考えられます」と語っていたが、Laboro.AIのソリューションデザイン部、シニアソリューションデザイナの白鳥氏は「LLMOとして対策すべきことは、いろいろとあるのではないか」という。
「ChatGPTもAI Overviewsも、ユーザーが欲しい情報がそのまま出てくるので、その情報のもとをたどる必要がないということなんですが、一方で、引用元がどこなのかがLLMから出されるので、企業側としてはそこに自社のURLが載るのか載らないのかという点は、かなり重要になってくると思います。では、そこに載せようとした時に、グーグルが重視する指標であるEEAT(Experience<経験>・Expertise<専門性>・Authoritativeness<権威性>・Trustworthiness<信頼性>)からさらに深掘りして、LLMが探索してくるように一次情報をきちんと載せるとか、LLMは文脈単位で理解するので一つのURLに対して一つの主張、一つの出典があるようにしてシンプルで参照されやすいようにしたり、エンティティも同じワーディングをしたりして、信頼性を上げておくと、引っ張られやすくなるというのが、LLMの特性上あるかなと思っています。
FAQをきちんと分かりやすく載せましょうというのは、従来のSEO対策でやられていたことですが、これをGEOやLLMOとしてやりましょうという観点は、あまりなかった気がしていまして、そこは目新しい話だと感じます」
長すぎずシンプルな構造
従来の検索エンジンによる検索とLLMの検索の性質の違いも、押さえておくべくだという。
「従来のキーワードによるネット検索とは異なり、LLMでの検索は悩み相談みたいな感じなので、検索する情報の性質が違うという前提はあると思います。検索キーワードに対してサイト上に製品情報やスペック、利用シーンなどの情報を網羅的に揃えておいて、多くのキーワードも散りばめておいてユーザーが探したものがヒットするような状態を作っておくというのが従来の対策の方向でした。一方、LLMでの検索は、FAQよりもっと前の段階の、ユーザーも何が問題なのかすらあまり浮かんでない、どう聞いたらいいかよくわからないような状態で質問を入力するケースが多いので、その検索結果として引っ張られるためにはストーリー性や文脈性があるコンテンツを用意する必要があるのではないでしょうか。
例えば『近くにあるコワーキングスペース』をネットで検索すると、これまではリストと口コミの要約、グーグルマップでの位置情報などが結果として表示されていましたが、LLMでは文章で口コミなどを要約して結果を返すので、店舗側としては日頃から口コミに対してこまめに返信するといったことが、結構重要になってくるかもしれません。
また、コンテンツが長すぎると要約が難しいので、検索結果として引っ張られるのが難しくなってくる可能性も考えられます。LLMの出力トークン数を考えると、あまりに長い文章だと処理できませんし、シンプルな構造のほうが引っ張られやすいかもしれません。グーグルもサービサーなので、答えを出力するのに一定以上の時間はかけられないため、短時間で情報をぱっと読み込めて、ぱっと信頼性が確認できるものが好まれるのではないでしょうか。AI Overviewに論文が引用されて出てくることあまりなく、ウェブページなどが引用されて、その情報が出てくることが多いと思います。なぜかといえば、論文を全部読み込んでいては、短時間に中身をすべて参照してユーザーの求める答えに対して解答を出すというのが処理的に間に合わないからでしょう」(白鳥氏)
LLMごとの特性を意識
どのLLMに情報をより多く出すことを狙うのかを検討することも重要だという。
「OpenAI o3などは、時間をかけてもきちんとした情報を出す必要がある場合には、論文や政府機関が出している情報などをきちんと読み込んで返すという傾向があるので、どのLLMをターゲットにして出すかというのは重要でしょう。LLMを提供する事業者側は結構そのあたりを考えて設計している気がします」(和田氏)
企業側としてはLLMOを考えるうえでは、消費者の検索のあり方がどう変わっていくのかも考慮すべきだという。
「グーグルでのキーワード検索が速いスピードでLLMに置き換わっているという状態であれば、企業側も早急に対策をしようという話になりますが、そういう空気はあまりないです。世界的にみると検索エンジンでの検索に比べるとLLMでの検索ボリュームは数パーセント程度といわれており、切迫感はそこまで高くはないでしょう。ただ、ファッションや旅行、医療、法律など、対話型の検索がされやすい業界では、LLMでの検索の比率が高まる可能性も考えられ、業界によって切迫感は違ってくるかもしれません」(和田氏)
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=Laboro.AI)


