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SEO対策もAI検索対策も、結局やることは変わらない?すぐにLLMOに取り組むべきか

2025.06.22 2025.06.21 14:13 IT
「Unsplash」より
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●この記事のポイント
・グーグルが「AIモード」をリリース。AI検索の増加で従来のSEO対策の有効性が低下するとの見方も
・AIエージェントの登場によってフェーズが変わる
・GEOやLLMO、AIエージェントの仕組みなどを知った上で検索への対策をすることが重要

 昨年(2024年)に「AI Overviews」をリリースし、一部のキーワード検索について機械学習モデルを活用した検索結果・要約情報をページ上位に表示させるようになったグーグル。先月には米国で「AIモード」をリリースするなどAI検索に注力する姿勢をみせている。世界でOpenAIの生成AIモデル「ChatGPT」などを利用する動きが広まるなか、検索エンジンの利用が減少して従来のSEO対策の有効性が低下したり、ネット関連のサービスを手掛ける企業がサイトへの流入減などの影響を受けるのではないかという見方も出ている。AIやLLMへの最適化対策として「LLMO」「GEO」「AI SEO」といったキーワードも注目されているが、SEOとは何が違うのか。また、企業はすぐにでも本格的にLLMOに取り組む必要があるのか。専門家への見解を交えて追ってみたい。

●目次

情報の多様性と構造化がカギ

 グーグルのAI OverviewなどのAI検索が広がると、ネット関連のサービスを提供する企業に大きな変化や影響が生じる可能性はあるのか。カスタムAI開発などを通じてクライアントの課題解決を行う株式会社Laboro.AIの執行役員マーケティング部長、和田氏はいう。

「ウェブサイトの形態によって差が出てくると思います。ユーザーが単に情報を調べるために検索した時にAI Overviewで情報が出てきて、その内容で納得すれば、そこで検索をやめるでしょう。一方、商品を購入したい場合はAI Overviewで情報を見ただけでは目的を達成できないので、さらに商品サイトなどにアクセスしていくことになります。ですので比較サイトなどはAI Overviewの登場によって自社サイトへの流入が減るといった変化が生じるかもしれません。一方、ブランドなど商品を販売しているサイトはユーザーが情報検索の結果を受けてウェブページにたどり着こうとしてくれるので、現時点ではあまり影響はないのではないかと思います」

 AI検索の利用が増えることで、従来のSEO対策が不要になる、もしくは有効性が低下するということはあるのか。

「まだ正解が定まっていないテーマなので、あくまで私自身のなかでの仮説となりますが、当面はあまり変わらないのではないかと予測しています。ネット検索・AI検索への対策をめぐってはSEO、AIO、GEO、LLMOなどいくつかのキーワードが出てきていますが、すべてを包含している最上位の概念がAIO(Artificial Intelligence Optimization)であり、その下に複数の対策がぶら下がっている構造だと考えています。SEOはウェブサービス的に捉えられますが、結局のところグーグルのアルゴリズム、AI機械学習の技術使っているので、AIOの一つとして位置づけられます。

 多くの企業が取り組んでいるSEO対策としての検索エンジンの最適化は、グーグルのページランクというアルゴリズムが元になっており、もともとは学術研究でリサーチをするためのシステムでした。学術研究の信頼性は他の論文にどれだけ引用されているかという引用数の多さなので、他の論文から引用される数が多い論文ほど上位に表示をするという仕様でした。その考え方を踏襲して、グーグル検索では被リンクの数が重視され、次第にコンテンツの内容も分析できるようになってくるとキーワードがどれだけ含まれているかという要素も判断されるようになってきました。この流れを受けて、企業はサイトの信頼性を上げるために被リンクの数と、コンテンツ内にキーワードをどれだけ散りばめるのかという網羅性を意識したSEO対策をやっているというのが現在です。

 そして最近出てきているのが生成AIをベースにしたウェブ検索のあり方で、これがGEO(Generative Engine Optimization)です。LLM(大規模言語モデル)よりも大きな概念であり、テキスト情報に加えて画像や映像なども含めた検索です。ですのでGEOでは、情報の多様性があるのかどうかという評価軸が、SEOにプラスして重要になってくるのではないでしょうか。

 一般ユーザーがLLMで検索する情報というのは、個人の潜在化した相談や悩みも多いです。言語化できなかったり、モヤモヤしている悩みを相談するというのがLLMの利用のされ方になると仮定すると、企業側はそれを見越した上で、マーケティング用語でいう『ペイン』のような、理由はよくわからないけれども痛みがあるという状態、プラス企業が訴えたい情報というのをセットでサイト上に構造化しておくと、LLM検索でヒットしやすくなるかもしれません」(和田氏)

EEATという概念に集約?

 LLM検索への対策としては、情報の負荷も大きな要素になってくると、Laboro.AIのソリューションデザイン部、シニアソリューションデザイナの白鳥氏はいう。 

「普及が進んでいるAIエージェントは、単純にテキスト情報を調べたりテキストを生成するというだけではなく、自律的により複雑なタスクをこなしたり、自己フィードバック、自己認識をして、自分が出した出力を確認した上で『どこが間違っているのか』という校正・校閲のようなことを行い訂正するということまでできるようになってきています。そうすると、情報を読み込むための負荷が少ない情報のほうが、LLMやAIエージェントによって引っ張られやすくなり、検索結果において優先度が上がってくるはずなので、企業側のコンテンツにはより正確性が求められるようになってきます。

 従来のSEOやLLMOでは、ページ上のコンテンツが多少正確性に欠けていても、被リンクが多ければ信頼性が高いと判断されて引っ張られていた面もありますが、AIエージェントの登場によってフェーズが変わるのではないかと考えられます」

 では、企業はすぐにでも本格的にLLMOに取り組む必要があるのか。

「AI Overviewなどの登場でコンテンツの網羅性、多様性、構造性、正確性などが重要視されると、結局のところ必要な対策は、グーグルが重視する指標であるEEAT(Experience<経験>・Expertise<専門性>・Authoritativeness<権威性>・Trustworthiness<信頼性>)という概念に網羅されるのではないかと結構思っていまして。そうなると、企業側としての対策はこれまでとあまり変わらないのではないかという考え方もあるでしょう。ChatGPTも裏側ではグーグルの検索システムを使っていたりしますし、生成AIのリーズニングモデルでも裏側ではキーワード検索していたりもするようです。

 ただ、GEOやLLMO、AIエージェントの仕組みなどを知った上で従来と同じことをやるのと、知らないでやるのとでは、対策の仕方や結果は微妙に変わってくるとも考えられます。FAQのような問いと解答があるという構造化されたコンテンツは検索で引っ張られやすいのではないかということはいわれているので、とりあえずそれをたくさん載せましょうみたいな方向に動いていくのではないでしょうか」(和田氏)

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=Laboro.AI)