(「ユニクロHP」より)
ファーストリテイリングは、すでに年間売上高が約8200億円(2011年8月期)に達し、押しも押されもしない衣料専門店の雄に位置づけられる存在だ。欧米も含めた海外での大量出店や、東京・銀座にはユニクロの殿堂ともいうべき同社の最大店舗「ユニクロ銀座店」を3月にオープンしたばかり。柳井氏は同店だけで「年間売上高100億円を目指す」と豪語するなど、その勢いはとまるところを知らない。ところが実は、主力の国内事業に暗雲が立ちこめているほか、一部海外の店舗にも変調が出始めている。
既存店売上高5%増のはずが、わずか1.4%の微増にとどまる
同社の12年8月期第1四半期(11年9~11月)の決算では、営業利益は前年同期比で2.8%の減益となった。「旗艦店のオープンが集中し、販促費が増加したため」と同社は説明している。それ自体はたいした問題ではないが、問題は既存店伸び率の鈍化だ。既存店の売上高は期初の予想で上期、下期ともに前年同期比5%のプラスを見込んでいた。しかし、フタを開けてみると期初3カ月(11年9~11月)で1.4%しか伸びていないことがわかった。
決算期が異なるため、単純な比較はできないものの、ライバルともいえるしまむらは、震災で被害を受けた分の損失を埋め、その上で震災特需を取り込んで、12年2月期の第3四半期(11年3~11月)決算で増収増益を果たした。また、コンビニ各社が相次ぎ最高益を記録している現状を考えると、低価格衣料専門店の雄と目されるユニクロとしては、この微増の数字は中途半端なものといわざるを得ないだろう。
「ユニクロも全国的に行き渡りすぎた。そろそろ反動が出てきたのではないか」と大手百貨店の幹部は指摘する。確かに10年9〜11年8月、既存店売上ベースで前年同月比減となった月は年間で8カ月もあり、客単価も横ばいか下降トレンド。こうした流れに対する同社の動きについて、業界関係者は次のように冷ややかな視線を送る。
「柳井社長は客単価アップの施策として、ファッション性のある商品の強化を図るが、11年9月に販売を開始した海外デザイナーとのコラボブランド『+』の失敗を、彼自身早々に認めている。同月に開催された同社の事業戦略説明会において、新デザインプロジェクト『ユニクロイノベーションプロジェクト』を発表したが、地方や郊外の店舗も多い中、ファッション性を備えた割高な商品にお金を払うお客が、どれだけ増えるのか?」
このままずるずると既存店売上高を落とすことは考えにくいが、大衆はつねに移り気だ。そのことを忘れてしまうと足元をすくわれかねない。