日本航空(JAL)が再上場体制に移行した。
3月に予備申請を終え、早ければ6月下旬にも東京証券取引所(斉藤惇社長)に上場を申請し、9月に再上場したい意向だ。3500億円の金融支援を行い、筆頭株主である企業再生支援機構(4月20日付で瀬谷俊雄社長)は保有する全株式を売り出す。「市況にもよるが、株式市場から吸収する資金は5000億円以上。これに数千億円をプラスした範囲。これがJALの時価総額になる」(外資系証券会社)と見られている。稲盛和夫・名誉会長は「再上場した新生・日本航空は株主から信頼され、さらに成長・発展していく必要がある」と語っている。
証券界には「市場環境が良ければ、もっと大規模になる可能性がある」と、JALの再上場に関して1兆円の大台に乗せるファイナンスを期待する声もある。JALの時価総額が全日本空輸(ANA、伊東信一郎社長。4月27日時点で5880億円)を上回る可能性が大きい。
JALは、会社更生法をテコにしたリストラ策で業績が急回復した。2012年3月期の連結営業利益は過去最高益(11年3月期の1884億円の利益)を更新する勢いだ。少なくとも「予想として示している(連結営業利益)1800億円は大幅に超える」(植木義晴社長)としている。従業員の3割に当たる16000人を削減し、不採算路線から相次いで撤退したのだから、これで利益が出なかったらそれこそおかしい。燃費の悪いジャンボ機を叩き売り、保有する航空機の数もおよそ2割減らした。
JALの”救世主”となった稲盛氏は来年初めには取締役から外れる。師と仰ぐ稲盛氏に「安心して去っていただけるような経営体制を作れるかどうかが最大のポイント」と、今
年2月に社長に就任した植木氏は懸命に社内を引き締めている。
業績のV字回復は株式の再上場にとって追い風だが、格安航空会社(LCC)が国内で3社、離陸(営業を開始)した。エアライン(民間航空会社)を取り巻く経営環境は大きく変わろうとしている。
付け加えておくが、企業再生支援機構がJAL株式を持ち続けられるタイムリミットは13年1月だ。現在、再生機構は3500億円出資、株式の96%を保有している。この超大株主が消えるわけだ。JALは新しい安定株主作りが急務になるが、三井物産など大手商社は同社の経営破綻で持っていた株券が、ただの紙屑になってしまい大きな損失をこうむった。JAL側の出資要請には慎重な姿勢を崩していない。また同社は、海外のエアラインにも出資を呼びかけているが、前向きなのは英ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)くらいだ。安定株主作りも頭の痛い経営課題だ。