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アップル、サムスン最高益の裏で日本総崩れ

パナソニック、7721億円赤字の原因は10年前のV字回復

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むしろ君の寝顔を撮りたい。
(「パナソニックHP」より)
 家電産業は、自動車産業と共に日本経済の高度成長を牽引してきた2本柱である。ところが、メイド・イン・ジャパンの代名詞であった日本の家電産業がいま総崩れの状態にある。この3月期決算の内容を見ると、パナソニック7721億円、ソニ-2200億円、シャ-プ2900億円と、軒並み大赤字を計上している。3社は赤字の原因について、「薄型テレビ事業の不振」「円高によるマイナス要因」を挙げるが、3社とも赤字決算の責任を取るかのように社長が交代する。創業以来最大の巨額な赤字を垂れ流し、3社とも生きるか、死ぬか、まさに会社存亡の危機に立たされている。

 いま重大な分岐点に立っている日本の家電メ-カ-は、なぜ経営に失敗したのか? 
 
 1990年代に国内家電メーカーを成功に導いたビジネスモデルは、製品の開発設計から生産加工まで自社グループですべてを手掛ける「自前主義」と「垂直統合モデル」である。その成功モデルがグロ-バル競争の時代に限界に突き当たり、もはや通用しなくなったことが、家電産業衰退の最大の原因だという解説が、メディア上でよくなされる。

 それならば同じ家電メ-カ-でありながら、米国のアップル社(11年10〜12月期)、韓国のサムスン社(12年1〜3月期)、台湾のホンハイ社(11年通年)などが最高利益を上げているのに対して、日本の家電メ-カ-が揃いも揃って創業以来最悪の赤字経営に陥ったのはなぜなのか? 家電業界関係者は、次のように解説する。

「経営により生み出される利益には、製造部門のコスト削減、効率向上などで得られる製造利益と、独創的なデザイン、コンセプトなど、企画・開発部門の優位性から得られる開発利益があります。2000年以降、先進国のもの造りの利益の源泉は、製造利益から開発利益に急速に移行しました。日本の家電メ-カ-経営者は、グロ-バル時代の到来によって、もの造りの利益の源泉が予想を超えるスピ-ドで変わったことを、見抜けなかったことにあるのではないでしょうか」(同)

 00年以降、労賃の安い中国など新興国の台頭と低価格競争の攻勢によって、製造利益の利益率(利益全体に占める製造利益の比率)は急速に低下し、どんなに製造現場が原価低減に努力しても利益が出せない状態が続いた。それに対して、開発利益の利益率(利益全体に占める開発利益の比率)は向上し、利益率の高いデザイン・設計・開発部門と利益率の低い製造部門との経営分離が謳われた。

 こうしたもの造りにおいて、主要な利益をどの部門から得るか=利益思想が変わったことを00年にアップル社の社長に復帰した創業者ジョブズはいち早く見抜き、開発利益の追及にとことんこだわった。その結果として、iPod、iPad、iPhoneなど同社のヒット商品が生まれたと、前出の関係者は語る。

「ジョブズは、『民主主義に沿ってやってたんじゃ、独創的なアイデアやデザイン、素晴らしい商品なんて生まれっこないんだ。闘争本能の固まりのような独裁者が必要なんだよ』と言い、ときに独裁的なリーダーシップを発揮しながら、商品開発に経営資源を集中した。そして、利益率の低い製造部門は自社から切り離して世界中の製造企業と提携し、より安くして品質のいい企業に生産委託し『選択と集中』による『水平分業モデル』を世界に先駆けて実践したのです」(同)