シャープは、4300億円を投じて建設した、最新鋭の液晶パネル工場である堺工場が生産過剰に陥り、今年1月から50%以上減産中。このままでは、巨額の減損処理を迫られ、経営的に窮地に立たされる。堺工場を鴻海との共同運営にすることによって、同工場で生産する液晶パネルの半分を鴻海が引き取ることになれば、工場の稼働率が上がり、大幅な減産リスクを回避できるというウルトラCだ。
この結果、SDPの出資比率は、シャープ46.5%、郭氏46.5%、ソニー7%となるはずだった。しかし、シャープの経営悪化は、経営陣の想定を上回るスピードで進んだ。2月の時点では、12年3月期の業績予想を、最終赤字が2900億円になるとの見通しを発表していたが、主力の液晶テレビ事業の収益が予想以上に悪化したことからさらに下方修正し、最終赤字が過去最大の3800億円になると4月10日に公表した。約2カ月で、業績をさらに下方修正したわけだ。
この事態を受け、シャープは堺工場の連結対象からの切り離しを決断。SDPの出資比率をさらに引き下げるために、液晶の主要な部材の供給を受けている(サプライヤーの)大日本印刷と凸版印刷に持ち株の一部(7%以上)を譲渡することにした。堺工場の敷地内にある凸版印刷の子会社、トッパンエレクトロニクスプロダクツと大日本印刷の子会社、DNPカラーテクノ堺の液晶用カラーフィルター事業を、6月をメドにSDPに統合するかたちを取る。堺工場を連結子会社から外して業績への壊滅的なダメージを回避する、緊急避難策である。
シャープはSDPに対する議決権比率が40%未満になる、とだけ発表しているが、これにより、前出の郭氏は堺工場の筆頭株主となる。さらに鴻海グループは、合計で1329億円を投資して、シャープ本体と堺工場、両方の筆頭株主になる。明々白々たる買収である。