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(「スプリント・ネクステルHP」より)
15日の東京株式市場でのソフトバンクの株価の終値は2268円。買収が伝わってから2営業日で21%強下落した。負債が多いソフトバンクが、経営不振のスプリントの買収で、さらに多額の負債を抱え込むことを懸念した個人投資家の売りがかさんだ。これにヘッジファンドの仕掛け売り(カラ売り)が重なり、株価の下げを速めた。
孫社長は「円高、高速通信のLTE、iPhone5の発売とバランスよくパズルのピースが重なり、時がまさに来た」と、この買収の動機を語った。
そう円高なのだ。1ドル80円を超える円高が定着し、日本企業は海外企業を安く買うことができる。
M&A助言会社レフコによると今年1~9月の日本企業による海外企業のM&A(合併・買収)は364件。バブル期の1990年の同じ時期を上回り過去最多となった。ソフトバンクに限らず日本企業による海外企業のM&Aはブームなのである。
しかし、海外でのM&Aの失敗例は、掃いて捨てるほどあるが、成功例は極めて少ない。バブル期に円高に押し出されて、日本企業は米国企業をどんどん買った。バブルのピークとなった89年から90年にかけて、世界を驚かせる3件の大型買収があった。
89年9月、ソニーが米名門映画会社、コロンビア・ピクチャーズ・エンターテインメントの買収を発表した。買収費用は、総額46億ドル(6400億円=当時の円レートで換算)に達した。2年前のCBSレコードの(買収の)成功に味をしめ、今度は映画会社を手に入れた。
だが、この買収が明らかになると米国内で反発が噴出。「日本企業が米国の魂を買った」と批判された。米国文化の象徴であるデトロイト(自動車)、ハリウッド(映画)、メジャー・リーグ(野球)を外国企業が買収することはタブーとされていた。ソニーによる老舗映画会社の買収は、米国人の神経を逆なでした。
それからわずか1カ月後の同年10月、三菱地所によるロックフェラー・グループ会社の買収が明らかになった。買収額は日本円に換算して1200億円。マンハッタンの名所となっているロックフェラーセンタービルの一部を保有するロックフェラー一族の不動産会社が日本企業の手に渡った。