(「イー・アクセスHP」より)
孫社長は「いったん完全子会社化することに変更はないが、資本構成についてはメリット、デメリットを含め複数の案を検討中」とした。10月1日に買収を発表した時には、こんなことは言わなかったが、「買収を決めた段階から複数の案があった」と認めた。
ソフトバンクはイー・アクセスを一時的に完全子会社にするが、その後は、出資企業を募って株式の保有比率を引き下げる考えだ。連結対象外となる3分の1未満にする案が有力ともいわれている。
2009年に総務省がソフトバンクとイー・モバイルに新たな周波数帯を割り当てた際に、「議決権ベースで3分の1以上の出資関係にある会社の申請は認めない」との指針があったからだ。ソフトバンクがイー・アクセスを完全に支配すると、割り当てられた2つの周波数帯を両取りすることになる。
完全子会社化を断念して出資比率を引き下げるのは、総務省の懸念に配慮したからだと、孫社長は言外ににおわせた。
3年前、総務省はソフトバンクに1.5ギガ(ギガは10億)ヘルツ、イー・モバイル(現イー・アクセス)に1.7ギガヘルツの電波を割り当てている。イー・アクセスは今年6月、プラチナバンドと呼ばれる700メガヘルツの電波の割り当てを受けた。イー・アクセスに対して新たな電波を割り当てられた直後に、ソフトバンクが買収を発表したため、「電波を両取りするためのデキレースではないのか」との批難が高まった。
イー・アクセスを買収すると発表してわずか1カ月で、孫社長は完全子会社化を断念した。これは孫社長にとって誤算だったのが、それとも計算通りなのか。
ソフトバンクはもともとイー・アクセスを完全子会社化したかったわけではない。電波だけ借りられればよかったのだ。イー・アクセスが3月から高速携帯電話サービスLTEを始めた1.7ギガヘルツ帯の周波数は、米アップルが新型スマホiPhone(アイフォーン)5で世界標準の電波に指定している。電波不足(=つながらないクレーム)に悩むソフトバンクは、当初、イー・アクセスに賃借料を支払い、1.7ギガヘルツ帯の電波を借りようとしていた。
孫社長が買収に乗り出したのは、ライバルのKDDIがイー・アクセスの買収に動いていたからにほかならない。同社は周波数の拡大を狙い、ソフトバンクより早い時期からイー・アクセスや、同社の筆頭株主である米ゴールドマン・サックスに接近していた。しかし、買収金額を巡って折り合いがつかない状態が続いていた。