(「日本直販HP」より)
今年夏、民間調査会社、東京経済が銀行・商社の審査マンを対象にしたセミナーで「危ない企業300社リスト」を発表したが、そのなかに総通が入っていたことが、一部で話題になった。「20年にわたる大掛りな粉飾が発覚して、金融機関からの支援が難しくなった」というのがリストアップされた理由だった。
粉飾が発覚したのは6月。資金繰りが悪化した総通は、主力金融機関の京都信用金庫(京都市)など借入先約20行に元本返済の猶予を求めた。京都信金が再建策を検討するため、監査法人による資産査定(財務デューデリジェンス)を行った結果、架空在庫や利益の水増しなど過年度の粉飾決算が発覚した。
2011年9月期の、同社の財務諸表上の純資産額は約70億円。それが実際は80億円を超える債務超過に転落していたのだ。このほか創業者の長男の喜多俊憲社長と弟の喜多良二副社長の2人に、相続税の納付資金としてそれぞれ5億円ずつ貸し付けていたが、10年以上、返済されないままになっていた。
粉飾を行ったのは「テレビコマーシャルを打ち続けるためには、財務内容が健全であるように見せること必要だった」(金融機関)からと見られている。
1961年に創業者である喜多進氏が、ペン習字の通信教育を始めた。72年には通販事業に参入、テレビショッピングの草分けとして知られる。テレビショッピングは、市販されていないアイデア商品をヒットさせ、大化けさせれば儲かるという、一発勝負のところがある。
庭木の手入れに使う最大3メートル伸びる「高枝切りばさみ」、掃除機の先につけて細かいゴミ掃除に便利な「スーパーはぼき」などのヒット商品を連発。95年9月期には525億円の売り上げを計上した。
だが、最近はヒット商品に恵まれなかった。ハンガーにワイシャツをかけたまましわを伸ばせるとうたった「NEWパワースチームアイロン」は、テレビCMのようにはいかないという苦情が出た。アイロンが異常発熱して、発煙の恐れがあるとして11年9月、リコールを行い損失が発生した。
ネット通販に押され11年9月期の売り上げは、256億円に半減していた。インターネットを使ったECサイトでの対応が遅れたことが大きい。