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“ずさん”格付け会社が窮地へ?S&P行政処分で発覚…

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金融庁が入居する霞が関コモンゲート
(「Wikipedia」より)
 「驚きました。金融庁が米系大手格付け会社に行政処分を出すとは、さすが剛腕の畑中龍太郎長官です」(メガバンク幹部)

 12月14日、金融庁は証券取引等監視委員会の勧告を踏まえ、スタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン(S&Pジャパン)に対し、信用格付け付与の業務管理体制の整備が不十分で金融商品取引法に違反したとして業務改善命令を出した。先進国の格付け会社が行政処分を受けるのは極めて異例だ。しかも、その内容のずさんさに驚かされる。

 金融庁によれば、S&Pジャパンは、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)を束ねて組成したシンセティックCDOを構成する参照債務のクレジットイベントの発生状況の確認や、累積損失額の把握を適切にしていなかった。このため、長期間にわたり誤った信用格付けを付与していた。また、システムへの金額の誤入力によって格下げをしなかったケースや、社内で決定された格付けと異なる格付けが公表された事例が確認されたという。

 格付けに対する投資家の信頼を著しく失墜しかねない事態であり、金融庁は再発防止策の実行とその検証を定期的に同庁に報告させる。

 サブプライムローンに代表される証券関連商品の粗製乱造と高格付けを付与した格付け会社の責任は、07年のパリバショック、08年9月のリーマンショックを契機に世界中で問題視された。その後、格付け会社は、恭順の意を示しつつも「格付けはあくまで民間企業の1つの意見表明にすぎない」と責任を回避してきた。

 しかし、格付け会社への責任追及はまだ終わらないようだ。オーストラリア連邦裁判所は11月、オランダ金融大手のABNアムロが組成・販売した仕組み債に最上級の「AAA」の格付けを与え、投資家をミスリードしたとして、S&Pに損害賠償するよう判決を下した。

 アムロが販売した商品は、複雑なデリバティブを組み込んだ「定率債務証券」で、13の市役所に販売し、計3000万ドルの損失を与えた。同裁判所は「格付け会社は必要な調査を行わず、十分なストレステストも実施しなかった」と批判している。実際、この仕組み債は発売して間もなく、価格が急落した。

 訴訟は現在も継続中で、確定したものではないが、同様の訴訟はニュージーランドでも起こされる見通しである。

●格付けのガバナンスを握る資本

 格付け会社は一民間企業であり、株式を上場している。その実態は、S&Pは大手出版マグロウヒル傘下の事業部門であり、ムーディーズの親会社ムーディーズ・コーポレーションの株15%を保有する筆頭株主は、世界最大の投資家ウォーレン・バフェットのバークシャー・ハザウェイである。また、フィッチはフランスのフィマラックの子会社である。格付け会社のガバナンスは、これらの資本が握っている。

 また、00年までムーディーズの親会社であった調査会社ダン・アンド・ブラッドストリート・コーポレーションからは、第16代大統領エイブラハム・リンカーンをはじめ4人の米大統領を輩出している。

 現在、米SEC(証券取引委員会)が公認する格付け会社は10社あるが、ムーディーズ、S&P、フィッチで市場の95%のシェアを押さえている。3社寡占への批判も根強い。

「格付け会社の影響力を抑制しなければならないと、私は以前から言ってきた。格付け大手3社の独占的な支配を切り崩す」

 米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが昨年7月、ポルトガルの信用格付けをジャンク級(投資不適格)に引き下げたことに対し、ドイツのショイブレ財務相は、こう語気を荒らげた。