(「マクドナルドHP」より)
日本マクドナルドホールディングスの目先の業績は好調だ。2012年12月期の連結営業利益は、前年同期比4.3%増の294億円を見込む。06年同期以来、6期連続で営業最高益を更新する。
これを好感して、ジャスダックに上場している同社株は11月30日に年初来高値の2350円を付けた。しかし、原田永幸・会長兼社長兼最高経営責任者(CEO)の表情は冴えない。「予測を見誤った」からだ。
読みを誤ったのは、東日本大震災後の消費者の行動だ。震災の直接の影響で昨年、消費者の外出が減った。その反動で今年は必ず客足が戻ってくるという強気の読みをして、既存店の売り上げをアップする施策を試みたが、ことごとく外れてしまった。11月の既存店売上高は前年同月比3.1%減で、8カ月連続で前年割れの状況が続く。
100円バーガーや120円バーガーの低価格メニューを強化し、客数を一気に伸ばした後、客単価を押し上げる値段の高い商品を出して既存店の売り上げを嵩上げする。原田が04年に社長に就任以降、8年連続で既存店売り上げを伸ばしてきた手法は“原田マジック”と呼ばれた。今年はこのマジックが通用しないのだ。
今年、原田はコーヒー類を新規顧客獲得の武器とする方針を打ち出した。コーヒーのSサイズを40円値下げして100円にした上で、値段の張るコーヒーを投入した。
7月には、東京・原宿表参道店にスペシャルコーヒーを提供する売り場を新設した。「マックカフェ バイ バリスタ」と名付けた売り場には専用レジを設け、カプチーノやカフェモカなどを販売した。価格はMサイズで270~330円と高めに設定した。
5年後をメドに全店舗数(3300店)の3割相当の1000店に「マックカフェ」を設置する。ドトール・日レスホールディングス(1399店=12年11月末)、スターバックス コーヒージャパン(955店=12年3月末)と、ほぼ肩を並べる店舗数を目指す。こうした店では売り上げの1割をスペシャルコーヒーで稼ぐというソロバンをはじいた。
常に原田が、低価格品と高級品をワンセットにした商品戦略を取るのは、マクドナルドが、過去に低価格競争のドロ沼にはまった苦い経験があるからだ。
10年前の02年8月5日、創業者の藤田田・会長兼CEO(当時)は「59円ハンバーガー」を売り出した。激安バーガーを求める人々の列ができた。しかし、これは一時的な現象でしかなかった。値下げ、値上げ、さらに値下げを繰り返したことで、「バーガーは安物」というマイナスイメージが消費者に定着してしまった。値下げしても客足は伸びなくなった。そうなると、もう値上げはままならない。マクドナルドは創業以来初の赤字に転落。創業者の藤田田は、経営責任を取って辞任した。
経営再建のために04年5月に米国本社から送り込まれたのが原田永幸である。持ち株会社、日本マクドナルドHDと事業会社、日本マクドナルドの社長兼最高経営責任者(CEO)に就いた(翌年、会長も兼務する)。