パナソニックの津賀一宏社長は1月8日(日本時間9日)、米ラスベガスで開幕した世界最大の家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」の冒頭の基調講演で米ゼネラルモーターズ(GM)、米IBMと業務提携を拡大したことを明らかにした。
GMとは自動車用の新たな情報システムを開発する。ネットワークを通じ情報を処理するクラウドコンピューティングを活用した家電製品関連の共同事業を行うことで、IBMと合意した。「大きな成長が期待できる、企業向け(BtoB)事業を最大化していく。産業構造が強い航空や自動車向けに注力したい」と述べた。
津賀社長は今後、世界の有力企業と協業して、企業向け事業を強化する姿勢を鮮明に。巨額赤字の原因となったテレビ事業を縮小する脱テレビ路線へ、大きく一歩踏み出した。
2013年、パナソニック、ソニー、シャープの3社のテレビ事業の復活はあるのか? その答えはノーだ。産業界の関心は、どこが脱テレビ宣言の口火を切るかに移っていた。
「今や、テレビが(家電の)顔でしょうか?」。津賀社長は12年10月31日に開いた中間決算発表の席上で「かつて稼ぎ頭だったテレビを、もはや、中核事業と見なしていない」と言い切った。そして13年、世界のエレクトロニクス業界の首脳が集まる「家電見本市」で、脱テレビを宣言した。
講演後、日本の記者たちに「コンテンツを手掛ける企業との提携や買収も(将来)あり得る」と、さらに踏み込んだ。
パナソニックの基調講演は、松下電器産業時代の08年以来5年ぶりのことだ。前回はプラズマテレビの将来性を力説したが、プラズマテレビは液晶に完敗して競争力を失った。パナソニックは、液晶テレビで独走する韓国・サムスン電子に完膚なきまでに叩きのめされたのである。
サムスン電子は1月8日、12年12月期の連結決算(速報)を発表した。スマートフォン(高機能携帯電話)の好調が続いており、売上高は前年同期比22%増の201兆500億ウォン(約16兆5000億円)、営業利益は同86%増の29兆100億ウォン(約2兆4000億円)となった。営業利益は10年12月期の最高益を更新した。トヨタ自動車の過去最高の営業最高益は08年3月期の2兆2703億円。サムスンはトヨタをしのぐ高収益企業に変身したことになる。
サムスンは日本のエレクトロニクス大手を、シェア(市場占有率)と収益力で圧倒する。ウォンが円と比べて安いことや、韓国の有利な税制がサムスンの競争力の源泉だといわれてきた。
しかし、本当にそうなのだろうか? 大躍進は、サムスングループを率いるイ・ゴンヒ会長を抜きにしては考えられない。同氏が会長に就任してから12年12月1日でちょうど25年が経過した。就任当時は半導体事業に進出した直後で、アジアの新興企業の1社にすぎなかった。
87年からの25年間でグループの売上高は39倍、時価総額は300倍になった。世界市場でトップシェアを誇る製品も20品目以上ある。09年には米ヒューレット・パッカード(HP)を抜き、世界最大のIT企業となった。