コンビニの成人向け雑誌、販売数は1日1冊? 売上減少、熟女系が人気の理由
コンビニ歴 21 年・バイヤー歴 15 年の筆者が、コンビニを選ぶ視点からお得情報、裏ワザまでを伝授! バックヤード事情を見れば、毎日の生活が変わるーー?
<今回のテーマ> コンビニとエロ本
闇夜にひっそりとたたずんでいたエロ本の自動販売機もほとんど世の中から消えてしまった昨今、成人指定雑誌(以下、エロ本)の購入先はコンビニ、という人も多いのではないだろうか?
一般の買い物と違い、エロ本はコンビニの中では買う時にお客様の心の揺れが最もある商品で、「買っていることを、なるべく知られたくない」「購入が恥ずかしい」などと考えるお客様が大多数。
購買を少しでもカムフラージュしたいという心理が働くので、 圧倒的にほかの商品と一緒に買われる“ついで買い”の多い商品となっている。もちろんエロ本と重ねて買うことでカムフラージュしやすい、一般雑誌と一緒に買われることが最も多い。実際には何と併買しようが、結局店員は商品を手にとって会計しているので、そんな努力もあんまり意味はないのだが、店側としては買い上げ単価がアップするので、エロ本目的のお客さまはありがたい商品なのだ。
ちなみにエロ本に関する、一般的な購買行動としては、
・女性店員、特に若くて好みのタイプがレジにいる場合は絶対買わない。
・いつも利用している店舗では買わないで、わざわざ少し離れた他店に行く。
・必ずJANコードの付いている裏表紙にひっくり返してレジに持っていく。
の3つがオーソドックスである。
現在、有害指定図書(不健全図書)や地方自治体の青少年保護などの条例により、18歳未満に販売できず購買層が限られており、近年ではそうした取り締まりも一層強くなってきた。05年ごろからは成人指定雑誌専用コーナーが設置され、中身が読めないようにシールの貼り付けが義務付けられている(ただしレディースコミックは、女性誌コーナーで展開される上、中身が読める状態で販売されているけど)。
コンビニでのエロ本売り上げは、現状1店舗 1日平均1~2冊。本雑誌の全体売り上げの約10%を占めている。ただし、フランチャイズオーナーが成人指定の商品を扱うことに消極的だったり、小中学校のスクールゾーン内にあるなど家主の都合でエロ本をまったく取り扱わない店舗もあるので、大手チェーンでは店舗比率で50〜60%程度での展開となっている。そのため、取り扱ってる店での売り上げ比率はもっと高くなる。
だが、コンビニの雑誌全体の売り上げは、ここ10年間、前年比90%強とか減少傾向にあり、苦戦が続いている。それでもエロ本の売り上げは、2年前までは前年比95%前後と一般誌よりは高い水準で推移してきたが、ここにきて、スマホやタブレット端末の隆盛により、前年比85%強と逆に売り上げの低迷が加速しているようだ。
こうした状況の中で、スマホ・タブレット端末をまだ持っていない50〜60代が主力購買者層で、ターゲットニーズに合った人妻・熟女系エロ本の売り上げが高く、品ぞろえの約半分を占めるようになった。また、家族持ちだと自宅で保管することが難しいので、出張など独りで過ごす時間が増えるであろうビジネスホテルに近い店舗では、チェーンの大小に限らず、よく売れているようだ。
一方、スマホやタブレット端末を使って、世に氾濫する過激な無料のエロ動画を見ている40代以下の層に対してエロ本出版社では、エロ本のおまけにDVDをつけるなどで対応している。だが、これも行政指導が厳しく、また、リスク回避のためにどうしてもモザイクが濃くなるので、お客様からの支持がどんどん無くなっているようだ。スマホやタブレット端末が高年齢者層にも行き渡ることが見込まれる今後、エロ本の販売もますます厳しくなることが予想される。
地方自治体の青少年保護育成条例とは別に、時代の流れにより、売り上げが急激にダウンし、エロ本がコンビニ店頭からほとんど姿を消す日もそう遠くないのかもしれない。
(文=渡辺広明/流通クリエィティブディレクター)