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ファミマは20億円投資…コンビニ「おにぎり」戦争加熱の理由、高度な技術の結集

文=清談社、協力=信田洋二/Believe-UP代表取締役
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ファミリーマートの店舗

 ファミリーマートが主力商品である「おにぎり」(同社の商品名「おむすび」)をリニューアルするため、約20億円を投じて新型の成形機を導入することを発表した。従来品よりも、手作りに近いふっくらとした食感を目指すという。今年に入ってからセブン-イレブン、ローソンも「おにぎり」の大規模な刷新を行っている。なぜ今、大手コンビニエンスストアチェーン各社が「おにぎり」に注力するのか。その背景を探った。

 コロナ禍を乗り越え、復調基調にあるコンビニ業界。大手3社を中心に各チェーンはオリジナル商品に力を入れているが、なかでも定番商品の「おにぎり」に改めて注目が集まっている。業界トップのセブン-イレブンは今年3月より、京都の老舗米問屋「八代目儀兵衛」が監修したおにぎりを販売している。独自の技術で低温精米し、粒立ちの良い米を選定、さらに甘さを引き出すようにブレンドするなど、老舗のノウハウを活かしたという。4月からは従来の手巻きおにぎりも「八代目儀兵衛監修」に全面刷新し、異例のフルモデルチェンジとなった。

 ローソンは今年4月より高価格帯の「金しゃりおにぎり」シリーズを刷新。コンビニ業界初となる立体成形方式を採用、4方向から均等かつ立体的におにぎりを成形することで、人の手で握ったような、ふっくらとした食感を実現したという。

 今回のファミマの新型機械導入は、ライバル2社のおにぎりの進化に合わせた対応であると思われる。各コンビニが今「おにぎり」に注力している背景には、どんな理由があるのだろうか。主に小売業向けのコンサルティングを手掛けるBelieve-UP代表取締役の信田洋二氏はいう。

「コンビニにとって『おにぎり』は日配食品のなかでも主力となる、まさに看板商品です。近年では、売上高も右肩上がりとなっており、ますます重要性が高まっています。これまでも大手コンビニ各社は、おにぎりについて絶えず改善やリニューアルを行ってきました」(信田氏)

「おにぎり」が、より存在感を増してきた理由のひとつとして、「コンビニ弁当」の衰退があるという。

「20年ほど前まで日配食品の主力は『お弁当』でした。当時のコンビニの主要な客層は20~30代の男性で、米飯に唐揚げやハンバーグなどのおかずが並んだ、ボリューム感のあるお弁当が売れ筋だったんです。しかし、時代の流れと共にコンビニを利用する層が女性や高齢者層まで広がり、食に関しても健康志向にシフト。するとお弁当の需要は減っていき、代わりに手軽に食べられる米飯として『おにぎり』の注目度があがったのです」(同)

おにぎり、お弁当、寿司とすべて配分が違う

 客層の変化と共に、買い物のスタイルも変化した。

「お弁当は、消費者ごとの好みの分量に合わせるのが難しいですが、おにぎりだとお腹の減り具合で2個、3個と調節できます。さらに、おにぎりひとつにカップの春雨スープを添えたり、レジ横の唐揚げをつけるなど商品を組み合わせて買うこともできる。こういった購買スタイルは、コンビニという業態と非常に相性がいいといえます」(同)

 おにぎりを中心に、個々のおかずを買ってメニューを組み立てるという消費者は確かに増えている。それだけに「おにぎり」の美味しさがより重要になっているのだ。

「日本人は、お米の味に対して非常に敏感です。そのためにコンビニはおにぎりの美味しさを追求してきました。かつては、消費期限を伸ばすために塩水炊飯したものが主流でしたが、技術開発により、塩分をあとから加える製法になり、ふっくらとした、家庭で食べるようなおにぎりを実現できるようになってきたのです」(信田氏)

 スーパーなど、安価を売りにするチェーンの「おにぎり」のなかには、いまも塩水炊飯しているものもあるが、それらと比べるとセブンなど大手コンビニの「おにぎり」は確かに一線を画すクオリティとなっている。

「大手コンビニが『おにぎり』や米飯に注ぐ技術と情熱はみなさんの想像以上だと思います。お米というのはデリケートな食材で、同じ種類でも、地域や収穫時期、さらに保存や精米によって味も扱い方も変わってくる。そんなさまざまな原料米を、熟練の担当者が美味しく、さらに均一な食味になるようにブレンドします。このブレンド比率も、おにぎり、お弁当、寿司とすべて配分が違う。こうしたノウハウは会社でも一部の人間しか知りません。さらに製造工場でも、吸水させる時間、水の種類、ベルトコンベア式炊飯器の火加減やスピードなどを毎日微調整している。こうした作業を担当する米飯の責任者は重要なポジションで、技術と経験のあるベテランしか携われません」(同)

おにぎり専門店というライバル

 コンビニにとって「おにぎり」は、売り上げという意味での看板商品だが、その原材料の調達から生産、流通、販売に至るまで、各社がこれまで積み上げてきた無数のノウハウが結晶した「代表作」ともいえる。そんなコンビニおにぎりの目下のライバルは、「専門店のおにぎり」かもしれない。近年では手作りおにぎり専門店が増えており、駅チカやショッピングモールなどにも進出。都内では、行列の絶えない人気店「ぼんご」や、その系列店も続々と増えており、大きな話題を集めている。

「炊きたてのお米をお客さんの前で握って提供するというおにぎりの美味しさに、コンビニは太刀打ちできません。しかし、それに近いレベルの商品を全国チェーンで大量販売するというのがコンビニのビジネスなのです。人気専門店の味の傾向などは、コンビニ各社もマーケティングしていると思いますので、今後販売されるリニューアル商品に反映されていくでしょう」(同)

 コンビニ技術の結晶である「おにぎり」。ひとつひとつは手軽で安価だが、そこには莫大な開発コストと蓄積された職人的ノウハウも握り込まれているのだ。

信田洋二/Believe-UP代表取締役

信田洋二/Believe-UP代表取締役

1995年、(株)セブン‐イレブン・ジャパン入社。店舗経営指導員(OFC)ならびにディストリクト・マネージャー(DM)として、千葉県成田市を中心とした成田地区、千葉市内などのセブン‐イレブン店舗合計120店舗に対する経営指導を行う。その後、情報システム部を経て物流部に在籍。2009年退社。(株)Believe-UPを設立、コンサルタントとして独立。スーパーマーケット、コンビニエンスストア、雑貨など小売業を対象に、店長、マネージャー、スーパーバイザー育成、データを活用しての売場づくり指導などで幅広く活躍している。
株式会社Believe-UP

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