大手コンビニエンスストアチェーン・セブン-イレブンは、従来よりカウンターのホットスナックコーナーで販売していた「チキンナゲット 5個入り」を、代替肉を使用した「みらいデリ ナゲット(5個入り)」(税込259円)に切り替えた。セブンは店頭表示などで代替肉使用とは謳わず、プラントベースプロテイン配合という伝え方をしているが、いったいどのような原料なのか。そして気になる味は従来のチキンナゲットとはどう違うのか、専門家に解説してもらった――。
チキンナゲットといえば、マクドナルドの「チキンマックナゲット」(5ピース:240円、15ピース:710円<税込み、以下同>)が人気メニューとして有名だが、セブンのほか、ファミリーマートは「ひとくちチキンナゲット」(318円)を販売。ローソンはテイストがチキンナゲット寄りの「からあげクン」(238円)がロングセラー商品になっているほか、昨年には、おかずが1つだけの「だけ弁当」シリーズ第5弾として「チキンナゲット弁当」(216円)を発売するなど、コンビニ各社もチキンナゲットを扱っている。
セブンが14日に発売した「みらいデリ ナゲット」は、同社が地球環境に配慮しつつ持続可能な調達という課題に取り組むアクションとして、代替食品や植物工場で生産する野菜を使用する新商品シリーズ「みらいデリ」の一環。えんどう豆を使ったプラントベースプロテインを使用したものだが、実は通常の鶏肉も配合されており、いわゆる「100%代替肉」の商品ではない。同シリーズとしては、ツナとえんどう豆由来の原料を使用した「みらいデリ おにぎり ツナマヨネーズ」、植物工場で採れた野菜を使用した「みらいデリ ロメインレタスのシーザーサラダ」「みらいデリ やわらかほうれん草とベーコンのサラダ」なども同時に発売された。
「ナゲットは味の素、日本ハム、植物肉のスタートアップ・DAIZと共同で1年以上の開発期間をかけたということなので、今後はプラントベースプロテインの利用に力を入れて商品群を増やしていくのだろう。また、HP上の『みらいデリ』シリーズの説明ページには国連のSDGsのロゴも記載されており、投資家向けに企業としてのSDGsへの取り組みをアピールする意図もあるのでは」(コンビニ業界関係者)
代替肉のトレンドがいまいち広がらない理由
まず気になる味だが、通常のチキンナゲットとの違いはあるのだろうか。自身でも飲食店経営を手掛ける飲食プロデューサーで東京未来倶楽部(株)代表の江間正和氏は、実際に試食したうえで次のようにいう。
「感想としては、鶏肉を100%使った通常のチキンナゲットの味にかなり近いと思います。小ぶりな1口サイズで、カリカリに揚げられています。噛むとカリっとした歯ごたえがあり、中身は柔らかいです。半分食べたあとの断面を見てみると、未加工の肉のような繊維質ではなく、形成肉のようにホロッとほぐれます。衣の味付けが濃く、中身の味よりしっかりしているので、衣のほうの味付けに主役を持っていかれている印象です。ですので、『おいしいか?』『お金を出してまた買うか?』と聞かれれば、言葉に詰まってしまうというのが率直な感想です」
一時期、代替肉がブーム的なトレンドになっていたが、現在、食関連の業界では代用肉の使用は広まっているのか。
「トレンドとしては下火になっています。もちろん、インバウンドの拡大によりハラルフードを意識したものや、マクロビオティックのようなものなど、種類としては増えてきていますが、外食業界の主流トレンドとまではいえないことでしょう。広まらない理由としては『おいしいと感じるものがあまりない=無難なものが多い』『食べた気がしない』ことが挙げられます。肉や魚のようなメインがなく、野菜だけの食事で満足感を得られる人は少ないでしょう。マクロビ志向の人やビーガン、ベジタリアンが一定の割合以上いれば、そうした層向けの飲食店は商売として成り立ちますが、数が少ないため難しいのが実情です。健康志向が強い人のなかには、外食をせずに自分で選んだ材料や調味料を使って自炊する人も少なくありません。外食では、肉や魚介類、野菜などいろいろなものを食べられる店のほうが、お客に好まれる傾向があるのです」(同)
食関連の業界は代替肉に対して、どのような見方・姿勢を取っているのか。
「慎重な姿勢をとっている企業や店舗が多いと思います。今は、消費者が産地や成分表示にも気を遣う時代です。『これは、どこどこ産のお肉です』と銘柄やブランドを明示されたほうが、お客さんは安心ですし、喜びます。逆に『代替肉です』と言われると、物足りなく感じてしまうお客もいるでしょう。本物のお肉にも負けないくらい美味しく満足度が高いものが出てきて、名称も代替肉ではなく、しっかりと食材や料理として確立されれば、飲食店も積極的にメニューに取り入れるかもしれません。今回セブンとしては『代替肉ではなく、新しいジャンルの開拓』を狙っていると思われますので、業界全体にとっては、お店やお客さんの選択肢が増える可能性があるため、歓迎すべきではないでしょうか」(江間氏)
(文=Business Journal編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代表)