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「さすがに高い」と波紋…セブン、さば1尾+小おかず4品の弁当・600円の複雑な理由

文=Business Journal編集部、協力=信田洋二/Believe-UP代表取締役
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セブン-イレブン「さばの一夜干し幕の内」(同社のHPより)

 大手コンビニエンスストアチェーン・セブン-イレブンは6日、サバの一夜干し、一口サイズのハンバーグと薄切り肉、揚げ物の主菜4品、副菜の小さなおかずカップ入りの切り干し大根から成る新商品「さばの一夜干し幕の内」を税込み594円、約600円で発売。SNS上では「さすがに高すぎる」として話題を呼んでいる。持ち帰り弁当専門店チェーンやスーパーでは同様の分量・品数でもっと安く買えるとの声もあるが、果たして今回のセブン新商品の価格は妥当といえるのか、専門家に聞いた――。

 原材料価格とエネルギーコストの高騰が続くなか、食に関する領域でも値上げが続いている。牛丼チェーン「吉野家」は昨年10月に価格改定を実施し、「牛丼」「豚丼」などの丼メニューの本体価格を一律で20円値上げし、「牛丼」(並盛)は448円に。ハンバーガーチェーン「マクドナルド」は1月、「ハンバーガー」を150円から170円に値上げ。「熱烈中華食堂 日高屋」は3月、主要商品を10~50円値上げ。カレーチェーン「カレーハウスCoCo壱番屋」は昨年12月、カレー6品目を44円値上げ。ファミレスチェーン「ガスト」は昨年10月、メニューの約半分を値上げし、「チーズINハンバーグ」を769円から824円(都心部)に値上げした。

 小売店の店頭に並ぶ食品も値上げが進行。2010年度と比較して食料全体の消費者物価指数が22年度は2割上昇。帝国データバンク調査によれば、6月に3575品目、7月に3485品目の食品が値上げの予定。鶏卵の1パック当たりの平均単価はこの1年で3割上昇し、冷凍食品メーカーのイートアンドフーズは家庭用冷凍食品の8割弱を10月納品分から5〜20%値上げ。アサヒグループ食品は粉ミルクの「はいはい」「ぐんぐん」を9月納品分から7〜8%値上げ。サトウ食品は9月出荷分から「サトウの切り餅 パリッとスリット(400グラム)」を505円から558円に値上げ(税別、以下同)。日清食品は6月から「カップヌードル」を214円から236円に値上げ。ハウス食品グループ本社は6月から「バーモントカレー中辛 230g」を349円から394円へ値上げする。

「おにぎり」が200円超えも普通に

 こうした状況のなか、ここ数年、コンビニ各社の弁当・総菜類の値上がりは多くの消費者が実感しているところ。なかでもセブン-イレブンはサイズが小さい割に価格が高めだといわれるが、たとえば「手巻おにぎり 醤油麹仕立て熟成紅すじこ」は205.20円(税込、以下同)、「たまごサンド」は302.40円、「レタスとロメインレタスのシーザーサラダ」は367.20円、「コク旨だれの炭火焼き牛カルビ弁当」は594円、「熟成肉のロースかつ丼」は626.40円、「かき揚げ自慢の二八そば」は518.40円、「アルポルト監修 カルボナ-ラ」は648円となっている(6月8日現在/価格は地域によって異なる)。コンビニ定番商品である「おにぎり」類でも200円超え、サンドイッチ類でも300円超え、弁当・麺類でも500~600円超えも珍しくない。

 そんなセブンは6月、新商品「さばの一夜干し幕の内」を発売。前述のとおり、主菜4品に少量の副菜1品のお弁当にしては約600円という価格は高いとして、SNS上では以下のような声が続出している。

<こんなんが600円…?>

<あれ?幕の内ってこんなんだったか?>

<物価高でもこれは400円>

<こんなの380円>

<もうカップ麺しか食えない>

<セールの時ならのり弁2個買えちゃう>

<これ売れるんか…?>

<コンビニで買う意味ある?>

商品企画における厳しい規格・基準、原材料調達における企業努力

 ちなみに魚を使用したお弁当で他業態の商品と比較してみると、大手スーパー・西友の鮭フライ、ちくわ天、卵焼き、ハンバーグ、スパゲティーナポリタン、きんぴらごぼう、ご飯が入った「まんぷくのり弁当」は429円。持ち帰り弁当店チェーン「オリジン弁当」の塩麴焼き鮭、エビフライ、鶏のから揚げ、筑前煮、卵焼き、天ぷら2種、シューマイ、副菜3種、ご飯が入った「塩麴焼き鮭の彩り幕の内弁当」は712.80円となっている。

 では、今回のセブン新商品の価格はどう評価すべきか。小売業などへのコンサルティングを手掛けるBelieve-UP代表取締役の信田洋二氏はいう。

「商品の価格に対する感覚は人それぞれであり、高いと感じるか安いと感じるかは一概にいえない。本商品がこの価格で販売されているということに対して『サバだから高く感じる』という人がいても、おかしくはないが、今はサバが安い大衆魚という時代ではないということは認識をしておく必要がある。

 商品写真を見る限り、かなり大型のサバを利用しており、小型のサバを利用している場合に比べ原材料費はかなり高額となっていると思われる。コンビニの商品は原材料に厳格な規定・基準があり、同型でほぼ同じサイズのモノでなければ使用できない。例えば1尾のサバのサイズは『25~28cm』という幅ではなく、『25cmプラスマイナス5mm』という幅で商品企画を行う。ほぼ同型・同サイズのサバを漁で既定の数量を確保しようとすると、かなり大掛かりな商品の手配・確保が必要となる。

 恐らく原材料のサバはノルウェーなど北欧産と思われるが、漁では網の中にさまざまなサイズのサバが混在しており、セブンの規格・基準に沿ったサバだけを選定することになると、どれだけの歩留まりで規格・基準に合致したサバが獲得できるかということになる。規格・基準値よりも小さくても大きくても商品としては適さず、これだけの手間暇をかけて販売される弁当の価格を高いとみるか、安いとみるか、意見が分かれるだろう。

『もっと基準を緩めて、歩留まり率を上げて価格を安くすればよいのでは』とも思われるだろうが、日本人の消費特性として、同じ商品なのに、ものによってサバのサイズ異なれば、文句や不信感を持たれてしまうのではないか。コンビニ運営会社側に消費者を騙してでも暴利をむさぼるという発想はそこにはないし、その点に少しだけでも思いをめぐらせて『高い』『安い』を論じるべきではないか」

 持ち帰り弁当チェーンやスーパーであれば、同じような分量・種類の弁当がもっと安く買えるのではとの声もあるが、やはり、コンビニチェーンだと割高になってしまうのだろうか。

「これだけ『サイズにこだわった商品』だからこそ、持ち帰り弁当チェーンやスーパーなどで販売されている商品と差別化されることになる。サバやホッケなどの魚のウリは脂の乗りであり、概して大型であればあるほど、その価値が高まるといわれる。小型のサバなどを大量に調達すれば、より低価格で販売できるかもしれないが、セブンとしてはサバの味(型)に徹底してこだわるという商品企画であると考えられる。そのほうは差別化のポイントが明確であり、『当店弁当史上、最大級のサバ』などと打ち出して販売することが可能となる。

『価格は安いが品質は他チェーンで売られているものと同じ』となってしまえば、店舗としても売り込みは難しく、消費者からも『他チェーンと何が違うのか?』という評価を下され、購入に至らない。

 セブンには『絶対的差別化の追求』というテーマで商品の企画を進めてきた歴史がある。その一環で今回の商品の企画が立てられたのであるとすると、これだけ大型のサバの半身を使った弁当は、他社との明確な差別化がなされる可能性がある。その分の対価として、この値段に決められているのである。『コンビニだから高い』ということでは決してない。原材料確保などの内情を知らずして単に表面だけを見た評価を下すというのは、いかがなものだろうか」

(文=Business Journal編集部、協力=信田洋二/Believe-UP代表取締役)

信田洋二/Believe-UP代表取締役

信田洋二/Believe-UP代表取締役

1995年、(株)セブン‐イレブン・ジャパン入社。店舗経営指導員(OFC)ならびにディストリクト・マネージャー(DM)として、千葉県成田市を中心とした成田地区、千葉市内などのセブン‐イレブン店舗合計120店舗に対する経営指導を行う。その後、情報システム部を経て物流部に在籍。2009年退社。(株)Believe-UPを設立、コンサルタントとして独立。スーパーマーケット、コンビニエンスストア、雑貨など小売業を対象に、店長、マネージャー、スーパーバイザー育成、データを活用しての売場づくり指導などで幅広く活躍している。
株式会社Believe-UP

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