セブン-イレブンの定番サンドイッチ「ミックスサンド」を購入したところ、ツナサンドに具材のツナが入っていないという報告がTwitter上に投稿され、話題を呼んでいる。セブンの総菜といえばこれまでも、内容量を多く見せるために容器を底上げしたり、陳列棚で客から見える部分だけに具材を入れているのでないかという声が寄せられることもあったが、「具材が入っていない」という事象はなぜ起きるのだろうか――。
原材料費やエネルギーコストの高騰による物価上昇に多くの企業・消費者があえぐなか、食品メーカー・小売業各社は価格を据え置く一方で内容量を減らすステルス値下げを行うなど試行錯誤を続けている。そんな逆境を顧客獲得の好機ととらえたのか、一部の大手コンビニエンスストアチェーンはあえて価格据え置きで内容量を増量するキャンペーンを実施。ファミリーマートは1月17日から2月13日の期間限定で「たまごサンド」、「シャキシャキレタスサンド」、「ハムチーズたまごサンド」の定番サンドイッチ3種類を価格据え置きで20%も具材を増量。ローソンも「盛りすぎ!チャレンジ」と銘打ち、総重量を47%増量した「盛りすぎ! 炒飯&焼そば」やパティを47%増量した「盛りすぎ! チーズバーガー」、総重量を47%以上増量した「盛りすぎ! プレミアムロールケーキ」などを販売し、品切れが続出するほどの人気となっている。
2社の「太っ腹」な取り組みにSNS上で歓喜の声があがるなか、同様のキャンペーンを行っていない業界最大手のセブン-イレブンは、前述のとおり「具材が入っていない」というネガティブな情報が拡散。ツナサンド、たまごサンド、ハムチーズサンドの3種類から成る「ミックスサンド」を購入したあるTwitterユーザが昨年12月、ツナサンドの具材が入っていないという報告を写真付きで投稿したのだが、今になって再びこの投稿が注目される事態となっているのだ。
「セブンといえば、コンビニ他社と比べて価格が割高なのに内容量が少なめという評価が以前から定着していた。ファミマとローソンが物価上昇で苦しむ消費者を応援するかたちで増量キャンペーンを実施するなか、セブンだけが取り残されて悪目立ちしてしまっている印象」(小売業関係者)
量の偏りが発生してしまう可能性は排除できない
風評被害による損害を考えれば、セブンが意図的に一部のサンドイッチに具材を入れていないということは考えられないが、こうした現象は製造過程において一定の確率で起こり得るとコンビニ業界関係者はいう。
「トッピング(盛り付け)のラインにおいては人力(人手)で実施しているので、このような事態が起きることは不可避です。どの工場でも、どの便でも起こり得ます。工場の労働力不足から、多くの外国人労働者(技能実習生など)が生産ラインの主力であり、細かい部分までは意思の疎通がうまくいかずに、具材の入れ方などについては徹底しきれていない実情があります。都度、抜き打ちで量目などについてはチェックをしていますが、全量チェックすることは困難なので今後も発生しうる事象です」
では、セブンがコスト削減などの目的で、意図的に客から見える部分だけに具を入れるなどの工夫をしている可能性はあるのだろうか。
「そのようなことをしてお客さまから不興を買い、チェーンとして何のメリットがあるでしょうか。日本の消費者は品質管理には非常に厳しい目を持っており、SNSなどで情報が拡散されることも多いため、不興を買うような商品を世に出してしまえばチェーンが受けるダメージははかりしれません。一部の工場で一部の作業員によって起こされたミスが、全国に2万店以上ある店舗の全商品で発生している事象だと捉えられるデメリットのほうが、一部のコスト削減効果のメリットを凌駕してしまいます。
ですので、意図的にコスト削減のためにこのような施策を取るというのは考えられません。工場で1銭単位、いや0.1銭単位でコスト削減を図れば、セブンのような規模で製造をしていると大きな効果になります。なので製造ラインにおいて規定以上の量を入れることは厳密に禁止されています。
コンビニでは一般的に、週に2回以上同じチェーンに来店するお客さまが全体の約60%程度を占め、ヘビーユーザーが多いという傾向があるため、個々の商品で日や時間により量目が変わり食感や味のバランスが崩れると、そうしたヘビーユーザーによる次回以降の購入は見込めなくなります。なので品質の安定化は永遠の改善テーマとして工場ごとに熱心に取り組んでいます。ですが、盛り付けのラインは商品アイテムごとに細かく基準が決められてはいますが、人手による人力作業であり、具材や見た目の偏りなどが発生してしまう可能性は排除できないのが実情です」(コンビニ業界関係者)
セブンに限らずコンビニ各社の試行錯誤は続く。
(文=Business Journal編集部)