例えば、最近のスマホには1000万画素以上など、デジカメと同レベルのカメラ機能が付いており、コンパクトデジタルカメラ市場を浸食している。富士フィルムホールディングスは、2013年3月期のカメラ販売台数を1100万台から1000万台へ下方修正。同社は今期、カメラ事業での営業黒字転換を目標としていたが、中国でのスマホ拡大や昨年10月以降の販売低迷により、達成は困難な情勢だという。パナソニックもコンパクトデジタルカメラの販売計画について今期2回、ソニーは3回下方修正した。
スマホ市場拡大の影響は、携帯ゲーム機やパソコンにも及んでいる。ソニーの携帯型ゲーム機販売台数は、今期期初の4割にとどまり、同事業の12年10〜12月の営業利益は前年同期比86%減と落ち込んだ。任天堂も携帯型ゲーム機の販売台数引き下げにより、13年3月期は2期連続の営業赤字を見込んでいる。また、富士通は欧州のパソコン子会社で販売不振が続き、のれん代の減損として13年3月期に280億円を計上する。
各製品の需要低迷は、デジカメ部品を扱う日本電産コパルや、パソコンやゲーム機向け部品を扱うアルプス電気といった部品メーカーの販売不振にもつながり、パナソニックもパソコン向け半導体事業の赤字が続く。完成品メーカーから部品メーカーにいたるまで、幅広い企業に影響が出ている模様だ。
一方、スマホでは、好調な米アップルや韓国サムスン電子に多くのコンデンサーを納入する村田製作所や、スマホ用タッチパネル向け光学フィルムを扱う日東電工は、12年10〜12月期に大幅増益。通信会社のソフトバンクやKDDIも最高益更新を見込んでいるが、縮小する各製品市場と比較すると効果は限定的だという。
こうした状況を受け、各社の対応にも違いが見られる。ソニーは2月9日、スマホの新製品を国内で販売したほか、スマホ向け部品メーカー各社も開発を強化し、スマホ市場拡大への対応を進める。一方、日本電産は自動車向けモーターに経営資源を集中し、スマホ以外の新しい収益源確保を狙う。スマホ市場の拡大により、メーカー各社は新たな対応を迫られているようだ。
(文=編集部)