2月19日付朝日新聞より
だが、こうした活況期に必ず現れるのが「投資を騙る怪しげな輩」だ。株、先物、FX、金、投資信託、不動産……これらありとあらゆる金融商品売買とは、あくまでも自己責任、他人の言を鵜呑みにして売り買いするものではない。
とはいえ、まだまだ投資を始めたばかり、利益は出したいが、小難しい金融や経済を勉強するつもりもないーー。そんな向きにぴったり合致するのが「投資指南業者」だろう。投資コーチ、投資セミナー講師など、その名称はさまざまだ。その多くは投資家に寄り添う、まっとうな業を行っているものの、なかには投資家を食い物にすることだけを目的とした投資を舞台にした悪徳業者も、残念ながら含まれているのも事実だ。
今、2000年代初頭から半ば、かつて「ホリエモン」が一世を風靡した株取引ブームの時代、悪徳業者紛いの謗りを受けた投資指南を業とする者が、最近の投資心理改善とあわせるかのように復活しつつある。
●投資コーチは金融商品取引法違反?
2000年代前半から半ばにかけて、主に個別株式取引における投資助言を「投資コーチ」なる名称で行っていたA氏(仮名)という者がいた。A氏が行っていたのは、インターネット上にて個人投資家を募り、個別株式や日経225先物などの売買の指南や、個別コンサルティングを行うというものだった。
当時、A氏が運営していたウェブサイトによると、「投資コーチ」業とは、以下のようなものである。
(1)プロの株式・先物トレーダーとしての知識・ノウハウを多くの個人投資家と共有し、コミュニティーを構築していく中で、投資行動に対する正しい考え方をサポートする。
(2)皆様にとって有益なコンテンツサービスをインターネットを通じてお届けする。
このうち(2)の「皆様にとって有益なコンテンツサービス」とは、日経225先物や個別株式の売買情報をコンテンツ契約者個々人に配信するというものだ。その配信された契約者個々人の情報には、「本日の売買シグナル 売り(もしくは買い、あるいは見送り)」など、具体的な売買指南情報がメールに記載されている。
さて、こうした契約者個々人に金融商品売買情報を指南する行為は、金融商品取引法第28条3に規定される「投資助言・代理業」にあたるといえよう。
この「投資助言・代理業」について、同法第2条8項11では以下のように規定している。やや冗長となるが、以下抜粋する。
<金融商品取引法2条8項11>
「当事者の一方が相手方に対して次に掲げるものに関し、口頭、文書(新聞、雑誌、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもので、不特定多数の者により随時に購入可能なものを除く。)その他の方法により助言を行うことを約し、相手方がそれに対し報酬を支払うことを約する契約(以下「投資顧問契約」という。)を締結し、当該投資顧問契約に基づき、助言を行うこと」
つまり業者が契約者と、1対1で投資情報やアドバイス(助言)を行い、報酬を得る行為は、金融商品取引法でいう「投資顧問契約」にあたり、これを行う投資助言業者は金融庁へ登録を行わなければならないことになっている。
事実、このような無届けの投資助言業者の摘発は、過去にも行われており、2008年にはメディアでもよく知られたトレーダーも逮捕、起訴された。
だがA氏が、かつて「投資コーチ」と称する業を営んでいた2000年代半ば、金融庁に投資助言業者として登録を行った形跡はなかった。
当時、この投資コーチ・A氏に対して、同氏が運営する個人投資家向けのウェブサイトやブログに、何人かの閲覧者から「この業は投資助言業ではないのか」との疑問が寄せられていたという。