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マンションなんて、買ってはいけない

新築の9割売れ残り?人気エリアでもマンションが売れないワケ

構成=松井克明/CFP
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新築の9割売れ残り?人気エリアでもマンションが売れないワケの画像1富士山から都市まで素晴らしい眺望が広がる「リヴァリエ」。(「同公式サイト」より)
 東日本大震災から1年と5カ月。不動産業界は「今が住宅の買い時」と、あおり始めている。

 復興需要の本格化に起因する建築資材の高騰傾向による価格上昇懸念に、建物部分にかかる消費税率の引き上げ、今後先細りしていく政府による住宅取得優遇策……と、経済誌も「今年よりは、来年、来年よりは再来年と、住宅購入を取り巻く環境は厳しくなる。今夏は住宅購入を決断する、ラストチャンスだ」とあおっている。

 しかし、実はそれほど住宅は売れていないというのが、住宅業界の本音だという。住宅ジャーナリスト榊淳司氏に、「マンションが売れていない現実」について語ってもらった!

   マンションが売れていないというのが実感です。たしかに、2011年の後半から市場のマインドは徐々に改善してきました。春先は短期間で完売して「販売終了」となる物件が出るなど、そこそこ動いていた気配もありました。しかし、それは全体の1%もなかったはずです。少なくとも、私が全物件をフォローしている港区や文京区では、ほぼ9割以上が竣工までに完売せずに完成在庫になります。

 ましてや、郊外エリアや千葉、埼玉、神奈川では、ファミリー物件が竣工後1年以上も完売できないケースがゴロゴロ。「人気が回復」したとされている湾岸エリアなど、竣工後4年以上のタワーマンションでも、いまだ販売中の物件があります。

――それでも、マンションデベロッパーのマンション供給は止まらない。中には、マンションが供給過多になっているエリアもあるという。特に顕著なのが、神奈川県・川崎市だ。

「川崎駅エリア」は需給環境が悪すぎますね。ここ数年、大規模物件がいくつも出てきたことに加え、周辺エリアには「ヨコハマオールパークス」(京浜急行本線・JR南武支線「八丁畷」駅 全1424戸)や矢向の「ザ・ミレナリータワーズ」(JR南武線「矢向」駅 全756戸)など、市場を顧みない無謀な供給が多すぎました。これまでは川崎といえば、「川崎駅最寄り物件は必ず売れる」と業者の間でも言われてきた鉄板エリアでした。ところが、ここにきて、川崎が売れなくなったという声を聞くようになってきたのです。

――たとえば、川崎の「リヴァリエ」というタワーマンション(京急大師線「港町」駅徒歩1分・「京急川崎」駅徒歩19分 全455戸)。支線とはいえ、駅から徒歩1分。東京都心のタワーとさほど変わらない仕様で、平均坪単価で180万円台(このエリアの相場観は平均坪単価140~160万円前後のため、高級マンションのカテゴリーに入る)、これまでであれば売れ行き好調のはずの物件だが、販売開始から1年以上たっても、いまだ、販売中なのだ。

 前々から「集客はまずまずだけど、契約できない」という話は聞いていましたが、なかなか苦戦しているようです。竣工は13年2月下旬、入居予定時期 は13年3月中旬(いずれも予定)ですが、それまでに完売させるためには二子玉川の「ライズ」並みの大幅な値引きが行われるでしょう。

――二子玉川の「ライズ」とは、東急田園都市線「二子玉川」駅徒歩6分、駅前再開発プロジェクトの一環として東急電鉄、東急不動産が手がけた高級タワーマンションだ。2年前に竣工済みだが、竣工後は大幅な値引きでやっとほぼ完売となった物件だ。しかし、こうした物件は、臨海地区でも同様だという。

 たとえばプロゴルファーの石川遼がCMに登場する「ザ・パークハウス晴海タワーズ」「プラウドタワー東雲」といった目玉物件でさえ、業界関係者からは売れ行き好調といった声が聞こえてきません。さらに、晴海の南側に、ゆりかもめの「市場前」という今はほとんど利用者がいない駅があります。ここは築地市場の移転先とされており、周辺にマンション建設計画が浮上しているのです。このエリアだけでなく、数カ月から半年先には、新たな物件が市場にジャカジャカ供給されていきそうです。政府の政策や業界の意識が変わらない限り、将来的にも明らかな供給過剰になっていくでしょう。

――「マンション買い時」ではない。これから、ますますマンションは供給過剰が続くというのだ。榊氏の最新刊『磯野家のマイホーム戦略』(WAVE出版)によれば、人口減少社会で、20年後の空き家率は20~30%の間。25%だとしても、08年の空き家率のおよそ2倍。住宅4戸に1戸が空き家になってしまうというのだ。

 私が申し上げるのは「今は(新築物件は)買い時ではありません。そして、これからもずっと『買い時』なんて来ません」ということ。かつて家が足りない頃の記憶を引きずっていた、今の40代以降の人々は、多少の無理をしてでも住宅を買いました。その結果、多くの人々が住宅ローンに苦しんでいます。ところが、物心ついた時からずっと不況だった今の30代は、「無理をしてまで家を買う」というマインドが薄く、実際、多くが買っているとは思えません。

 建築技術は格段の進歩を遂げ、今の住まいは木造一戸建ても鉄筋コンクリートのマンションも、20~30年くらいなら建て替えが必要なほどの老朽化はしない。つまり日本全体で見て住宅自体が市場で大幅に余ってしまうことが考えられるのです。人口ピラミッドを見ても、これから先、マンションを購入するボリュームゾーンである30代に、ピラミッドの山が生まれることは当分なさそうです。つまり、住まいを必要とする需要はこの先、ずっと先細るわけです。ならば、デフレ期には組んではいけないという住宅ローンをわざわざ組んで、あえて、業者の広告費が上乗せされた新築物件に住もうという人がどれだけいるでしょうか。

 東日本大震災後は、人々の意識も大きく変わり始めている。また次なる大地震がいつ発生するかもわからない。こうしたリスクの多い時代に新築の資産を持つ人がどれだけいるだろうか。これまでのように住宅を次々に建設させて景気回復を導く、その負担は庶民の住宅ローンで……といった持ち家政策はすでに破綻している。人々の意識の変化に政府やマンション業界が気づくのはいつだろうか?
(構成=松井克明/CFP)

松井克明/CFP

松井克明/CFP

青森明の星短期大学 子ども福祉未来学科コミュニティ福祉専攻 准教授、行政書士・1級FP技能士/CFP

『磯野家のマイホーム戦略』 失敗しないためのマイホーム戦略 amazon_associate_logo.jpg

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