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食品セクターではこんな食品が間違いなく上がる

円安で食料や燃料価格上昇の兆候 牛丼チェーンでは深夜営業のワンオペ復活も

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円安で食料や燃料価格上昇の兆候 牛丼チェーンでは深夜営業のワンオペ復活もの画像1トウモロコシ大干ばつでピンチ!(「Thinkstock」より)
 アベノミクスに浮かれていいのか。円安が進めば輸入品の価格が高騰し、給料が上がらなければ国民の生活は苦しくなる。3月から4月にかけて値上げラッシュがやってくる。

 政府・日銀は2%の物価目標を掲げているが、家電など高額商品の値上げは難しいから、物価を押し上げるための主役は食料品にならざるを得ない。急速な円安の副作用がじわりと出てくる。

 なかでも深刻なのは小麦だ。すでに国際価格は高騰している。2012年は北米で起きた50年ぶりの大干ばつの影響で、世界の穀物相場の基準になる米シカゴ市場でトウモロコシや大豆が史上最高値となった。この2品目に引っ張られるように小麦も08年以来の高値をつけるなど、世界的な穀物高騰にブレーキがかからない状況になった。

 そのため農林水産省は昨年10月、輸入小麦の政府売り渡し価格を3%引き上げた。小麦は政府がいったん買い取り、製粉会社に転売する。業界最大手の日清製粉グループ本社は昨年12月、業務用小麦粉を値上げした。今年1月には家庭用小麦粉(中力粉、薄力粉)を平均2~5%上げた。

 世界的な穀物高騰に円安が重なる。輸入小麦の政府買い付け価格は3カ月連続で上昇。今年4月から製粉会社に売り渡す価格は、平均で9.7%値上がりする。5銘柄の平均で1トン当たり54990円。半年前より4860円高くなる。9.7%という上げ幅は、11年4月の18%以来の高さとなる。

 売り渡し価格が3%上昇したら、家庭用小麦粉が2~5%値上がりした。売り渡し価格が10%近く上がれば推して知るべし。製粉会社は6月ごろ再度、値上げに踏み切るものと予想されている。

 小麦粉の値上げは、製パンや製めん業者のコスト増につながる。コスト増を吸収できなければ、価格に転嫁せざるを得ない。パンやパスタ、お菓子など生活に不可欠な製品に影響が出る。女性に人気のスイーツの値上げも必至だ。

 食用油は大豆の高騰と連動して、昨年立て続けに値上げされた。

 トウモロコシはビールの風味付けから清涼飲料水の甘味料、さらに段ボールの接着剤まで幅広く使われるコーンスターチの価格に波及した。

 穀物の高騰に追い打ちをかけるのが円安だ。過去にもこんなことがあった。

 07年から08年にかけて、米国・カナダ・オーストラリアの同時干ばつによる穀物価格の高騰に、原油高と円安が重なり、即席めん、スパゲティ、みそ、ソーセージ、食用油、食パン、ビールなどが相次いで値上げされた。即席めんの価格は7~11%引き上げられた。スパゲティの小売価格は前年比27%の大幅アップ、食パンの値段は16%跳ね上がった。まさに値上げラッシュだった。

 空前の食品インフレがやってくると大騒ぎになったが、08年9月に起きたリーマン・ショックが、景気のみならず穀物価格をも急落させた。加えて原油価格も下がった。日本はデフレ傾向が強いこともあって、この時は一時的な値上がりにとどまった。

 だが、今回は、そうはいかない。安倍政権は2%の物価目標を掲げている。政治的な思惑もあるから、値上げは実質的に“政府公認”となっている。農水省も値上げに目をつぶるといわれている。

 08年当時、大手飲料メーカーは原材料価格の高騰を受けて値上げを検討したが、消費の鈍化を恐れて断念した経緯がある。シェア争いが激しい飲料業界では、リーディングカンパニーが値上げに踏み切らない限り、値上げは無理である。だが、今回は政府のお墨付きでコストが上がる状況だけに、価格転嫁は容易になる。

 食品セクターの常として、値上げは業務用でまず試し、家庭用に波及してくる。J-オイルミルズ(ホーネンと味の素の製油部門が統合、味の素が筆頭株主)の14年3月期は円安で100億円のコスト増になるという。値上げ時期を前倒しして「価格転嫁で乗り切るしかない」と語る。日清オイリオグループ、不二製油、かどや製油(ごま油首位)も軒並み値上げだ。日清オイリオは三菱商事、丸紅が大株主。不二製油は伊藤忠商事が20.3%の株式を持つ筆頭株主だ。かどや製油は三菱商事、三井物産が1、2位の株主だ。原料を輸入して提供している総合商社にも値上げの恩恵は及ぶ。

 製粉はトップの日清製粉グループ本社、第2位の日本製粉、準大手の日東富士製粉(三菱商事が62.9%を保有)の3社が値上げを決めればすんなり通る。日清製粉の大株主(8位)に住友商事が顔を出しており、庶民に密着する食品の値上げは、口には絶対に出さないが、上位5商社にとって追い風となる。

 冷凍食品はスーパーマーケットの客寄せの目玉商品として5割引などが横行していたが、こうした投げ売りは影をひそめた。これで、冷凍食品大手の味の素は粗利の改善につながる。

 円安のオーバーヒート(1ドル=120円、130円)を見据えた経営が重要になってきた。人手の確保が難しくなるので、コンビニエンスストアとファーストフードの店に、まず影響が出てくる。牛丼チェーンでは悪名高いワンオペ(夜間の1人勤務)を復活したところもある。

 介護業界や3K職場は、ただでさえ人手不足の状態だ。外国人労働者は円安で仕送りができなくなるから絶対数が減る。人員が手当てできずに店を閉じる外食や小売りが出てくるだろう。人手をいかにして確保するかが、出店の大前提となる。

 アマゾンジャパンは1月9日から全品完全無料配送を止め、価格の安いものは一部、有料配送に切り替えた。

 食品以外で見過ごせないのがエネルギーだ。電気代、ガス代はすでに上がっている。4月は電力10社(沖縄電力を含む)、都市ガス4社(東京、東邦、大阪、西部ガス)が一斉に値上げする。液化天然ガス(LNG)など燃料費の変動分を反映させる毎月の料金変更(燃料費調整制度)による値上げだ。

 レギュラーガソリンの全国平均小売価格は11週連続で値段が上昇した。これからもっと上がる。「ガソリンは200円時代がくる」などと噂されている。

 日本はエネルギー資源もなければ、食料自給率も低い。輸入に頼らざるを得ない。円高の是正は輸出企業の業績改善につながるが、過度な円安は物価上昇で、一層の家計部門の負担増を招く。

 値上げラッシュの本番は、これからだ。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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