(「Wikipedia」より)
ただし、こうした円高修正・日経平均株価上昇の動きは、本当に「アベノミクス」を評価して起きているのかは、いささか疑問だ。行き過ぎた円高・株安の動きに対して、これを修正する動きは以前から起きており、それは安倍政権誕生前から始まっていたのは明らか。
「アベノミクス」がそれ以前から始まっていた円高・株安の修正の動きに偶然、タイミングが合った形で発表されたことで、“漁夫の利”を得るようにその手柄を手中に入れたことは間違いない。ただ、「アベノミクス」が円安・株高の動きの一助となった側面はあるだろう。
久しぶりの明るい経済状況の変化に、浮かれ踊る人々が出てきている。某コンビニエンス業界の雄は、安倍首相の「給与引き上げ要請」に応え、社員の給与を引き上げると発表し、男を上げた。しかし、くだんの業界は従業員のほとんどがアルバイトで成り立っており、正社員は全体の微々たるものでしかない。企業が給与を上げるとしても、それは正社員からであり、決して、契約社員やアルバイトのためではない。安倍首相の要請を逆手に取って企業のイメージアップにつなげた手法は見事と言えよう。
巷では、株で儲けた人たちが高級品を購入し始めているというニュースが喧伝されている。もっとも、株で資産運用を行っているのは富裕層などごく一部の人間で、大方の庶民には関係のない話。株を“持たざる悲劇”とニヤけた笑いを見せる連中の一方で、株高は「資産・所得格差の拡大」に着実に一役買っている。株高が唯一庶民に貢献するとすれば、年金資金の運用実績が改善したことか。もっとも年金制度が崩壊している以上、いくら運用成績が改善しても“焼け石に水”なのだが。
それどころか、「アベノミクス」の“3本の矢”である(1)大胆な金融政策(2)機動的な財政政策(3)民間投資を喚起する成長戦略は、若者層を中心とした低所得者層を“貧困層”に突き落とす可能性すらある。
先日、石油ファンヒーターの灯油を購入するついでに、愛車にガソリンを補給した。驚くべきことに、1万円札が跡形もなくきえ失せた。円安の影響でガソリン価格は1リットル当たり、アッと言う間に150円台に跳ね上がった。原子力発電が停止している今、発電は輸入エネルギー頼みの状態。円安は輸入エネルギー価格を引き上げ、電気料金の値上げを通じて、家計を直撃する。
日本の食糧自給率は、わずか40%程度。食料品のほとんどは輸入に頼っている。デフレ経済で給与が引き下げられても、物価が上昇せずに円高だったことで、食料品の価格は生活を支えるほどの低価格を保ってきた。しかし、円安により輸入物価が上昇すれば、立ち食いうどんも、ハンバーガーも値上がりする。もちろん、物価の上昇に見合うだけ、賃金が上昇すれば問題はないが、そんなことはあろうはずもなく、低所得の若者層ほど生活苦を強いられることになる。