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「ダイヤモンド」vs「東洋経済」! 経済誌双璧比べ読み(1月第4週)

市場で不安高まる、アベノミクスの危険性…家計逼迫、金利上昇の懸念も

安倍晋三おしゃれなサイト。(「安倍晋三HP」より)
毎日の仕事に忙殺されて雑誌を読む間もないビジネスマン必読! 2大週刊経済誌「週刊東洋経済」と「週刊ダイヤモンド」を比べ読み。小難しい特集を裏読みしつつツッコミを入れ、最新の経済動向をピックアップする。

「週刊東洋経済 1/26号」の第1特集は『人事・給与・採用が変わる! 65歳定年の衝撃』。今年4月から改正高年齢者雇用安定法が施行される。この改正により、企業は希望者全員を「65歳まで雇用」しなければならない。雇う側と雇われる側でそれぞれどんな対策をとるべきかを特集したものだ。

 今回、注目したいのは第2特集『アベノミクスの危うい綱渡り』だ。株価はこの2カ月で2000円近く上昇し、株式市場の熱狂が続いている。公共事業を中心とした積極財政と日本銀行に圧力をかけて金融緩和を推し進める「アベノミクス」の副作用はないのか、自民党・安倍新政権の経済政策を検証しているのだ。

 市場関係者からは懸念の声が続出する。みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「まず財政をふかして景気を浮揚させ、税収のベースラインを上げ、困ったら日銀に国債を買わせればいいと考えるのがアベノミクスの本質。うまくいく確率は低くても、まあやってみようという発想が根底にある。しかし、失敗した場合のリスク、賭け金の大きさは見逃せない」と警告する。

 消費増税の可否を判断する今秋とその直前の夏の参院選を前に、政府は財政健全化よりも目先の景気回復を優先させている。1月に決まった12年度補正予算は経済対策の事業規模20.2兆円のうち国の歳出を伴う「真水」部分は10.3兆円。これらの対策によって、実質GDPは約2%押し上げられ、雇用が60万人創出されると試算されているが、この累積する債務残高の下、今回の補正予算によって国債を約6.2兆円増発することになる。

 ただちに国債市場が動揺することはないが、市場関係者からは財政規律や先行きの長期金利上昇を懸念する意見が相次ぐ。

 JPモルガンの証券の山脇貴史・チーフ債券ストラテジストは「今回の補正予算は停滞ムードを払拭するための10兆円ととらえれば、1回限りならいい。が、これをやっても景気が上向かず、13年度も補正予算を組むとなれば、債券マーケットとしては最悪のシナリオ」と懸念する。

 日銀の2%の物価目標という金融緩和(リフレ政策)に対しても、「日本経済の状況でリフレ政策をとられたとしても、本当にインフレ率が上がるのか、債券市場の参加者はかなり疑わしく思っている」(債券市場関係者)という。

 数字を見ても欧米の中央銀行と比べて、日銀の金融緩和度合いは決して劣っているわけではない。すでに対名目GDP比のマネタリーベース(現金と日銀当座預金残高の合計)は30%近くに達しているからだ。

 株高を支える円安に関しても、現在のムードに流された金融相場にとどまる限り、相場は持続しないという見方が一般的だ。12年11月以降に、円安が進行したのは海外の投機筋が反応したことによるものの、足元では解消傾向にある。

 みずほコーポレート銀行為替資金部マーケットエコノミスト、唐鎌大輔氏は「日米間の金利差なき円売りは長く続かない。足元の金利差だけを前提にすれば1ドル80円ぐらいがまっとうなイメージ」と言う。

 日米の金利差がなくなっていることを考えると、1ドル90円ぐらいが当面の円安の天井だ。日本銀行総裁人事が決まる4月を過ぎれば、材料はとりあえず出尽くしとなる。さらに、選挙が目白押しの欧州で政治リスクが再燃するようなことがあれば、為替も株も反転し、円高、株安の流れに戻りかねないというシナリオもある。

 また、円安が企業収益にはプラスというのが安倍首相の認識だが、原子力発電所の再稼働問題の結論が見えない中で、円安が進んでいけば、ある時点でエネルギーコストの上昇が企業収益を圧迫する懸念が高まるだろう。輸出企業にとっては、プラスでもエネルギーや食料を輸入に頼っている日本において輸入インフレは家計を直撃する。原油価格が高騰した2008年には消費者物価上昇率が1.4%に跳ね上がった。1998年以降で1%を超えたのはこの年だけだ。

 つまり、かりに日銀の金融緩和による2%の物価目標が実現しても、その時、消費者はエネルギーや食料の輸入価格の高騰で生活難に直面しているおそれがあるのだ。 アベノミクスをもう1つ冷静にとらえた記事で言えば「Newsweek日本版 1/22号」特集『日本を救う? アベノミクス』の中の記事『日本株「根拠なき熱狂」の根拠』だ。ビジネス担当の外国人記者がアベノミクスに寄せる外国人投資家の期待感の正体を分析している。

 外国人投資家の期待感は以下の5つからなる。

(1)多くの外国人投資家は若いため、日本経済がどん底だった時代を知らない。そこで日本への投資に楽観的になりがちだ。

(2)アメリカ人はあまり外国に行かない。だから、アメリカでうまくいくことは他国でもうまくいくと考えがちだ。

(3)インフレは少なくとも株価にとってはいいことだ。普通に考えれば、インフレを促す政策はインフレを誘発する。インフレが進めば株価が上昇する。

(4)円が安くなればすべての日本株が割安になる。ここ数カ月間で円は12%下落した。

(5)日本の株価はそろそろ回復していい。CNBCのジェームズ・クレーマーが言うように「いつもどこかに強気相場がある」。しかし投資家にとってはその「どこか」が尽きてきた。

 つまり、日本の失われた20年を詳しく知らない外国人投資家が円安になったために、資金流入させているということのようだ。安倍政権は外国人投資家の期待をどこまでつなぎとめることができるだろうか。
(文=松井克明/CFP)

BusinessJournal編集部

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『週刊 東洋経済 2013年 1/26号』 働けるうちは働きたいよね。 amazon_associate_logo.jpg

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