「誰かの受け売り、もっと言うなら素人」(自民党のベテラン議員)。
安倍・自民党総裁は、経済問題について確たる主張を持っているわけではない。安倍政権が発足すれば経済は専門家に任せることになる。そこで経済ブレーンとなるのが「四季の会」の面々と親しいといわれている学者たちだ。
「四季の会」は葛西敬之・東海旅客鉄道(JR東海)会長が幹事役を務める財界人の集まり。前回、安倍氏が政権を投げ出した後も元首相を励まし続け、「再登板」を働きかけてきた。
葛西氏が東大法学部で机を並べ親友だった与謝野馨氏に「若手の有望株を呼んで勉強会をやろう」と持ちかけ、与謝野氏が当時、官房副長官だった安倍氏を引き合わせたのが始まり。2000年に「四季の会」は発足した。
葛西氏が集めた人物は、次代の経済界を担う社長候補たち。東京電力の勝俣恒久氏、新日本製鐵(現・新日鐵住金)の三村明夫氏、三菱重工業の社長に就いたばかりの西岡喬氏など、財界本流の人々だった。
前回の安倍政権時には、この四季の会のメンバーが重用された。
当時、安倍首相の強い意向が働き、NHKの経営委員長には富士フィルムホールディングスの古森重隆社長(当時、現会長)が選ばれた。古森氏も四季の会の主要メンバーだ。
古森経営委員長がNHKの会長に任命したアサヒビール(現・アサヒグループホールディングス)の福地茂雄・相談役も四季の会のメンバー。その後、福地会長の後任として11年1月にNHK会長に就いた松本正之氏は、JR東海の元副会長で葛西氏の部下。松本氏を推薦したのは前経営委員長の古森氏だったといわれている。
これらのNHKトップ人事は、四季の会メンバーによるたらい回しだ、と酷評された。
そのほか、取材する側のテレビの女性記者との“ピンクスキャンダル”で写真週刊誌を賑わした齋藤宏・元みずほコーポレート銀行頭取も「四季の会」のメンバーだ。
安倍応援団はほかにもいる。葛西氏などが発起人となっている別の集まりには、三菱東京UFJ銀行の畔柳信雄・相談役や三菱商事の小島順彦・会長、日立製作所の中西宏明・社長らが参加している。
安倍氏の経済人人脈と言えば、ウシオ電機の牛尾治朗会長がよく上げられる。牛尾氏の長女が安倍氏の兄嫁だ。先の首相の在任時に、閣僚人事について相談したという逸話が残っている。ただ、牛尾氏と葛西氏は水と油。牛尾氏は小泉政権下で経済財政諮問会議の民間議員として、規制緩和を推進した改革派、一方の葛西氏は新自由主義が大嫌いな保守本流なのだが……。
最後に学者の顔ぶれを紹介しておく。国家理念に関しては中西輝政・京都大学名誉教授が古くからのブレーンだ。