NEW
田部康喜「会話のネタがつくれちゃう!? 新メディア時評」第3回

安倍新総裁の命運も握る!?記事を書かない新聞記者たちとは?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

Business Journalのスマホ版もオープンしましたので、ぜひ、ご利用ください!

『ドキュメント副知事』
(講談社/西条泰)
 記事を書かない新聞記者たちの群れがいる。

 前線の指揮官であるキャップや、記事の編集と企画を担当するデスクに向けた「メモ」は書く。そのメモは、首相をはじめとする政府要人の言葉であり、政局をめぐる派閥やグループのトップに立つ政治家の言葉である。他社の記者たちと一緒のオフレコの懇談や、取材対象と1対1で会う「サシ」と呼ぶ場面での会話である。
 
 こうした書かない記者たちを、政治部の「番記者」という。「政権がどのように変わるのか?」「与党と野党の内部の権力闘争はどのようになっているか?」など、いわゆる政局報道に注力するのが、政治部の伝統的な取材である。政局の行方を決めるのは、解散権は持っているものの、首相その人ひとりではない。さまざまな政治の力学が働いて、方向性が決まっていく。

 こうした潮流を押さえるためには、いかに優れていようとも、たったひとりの記者や数人のチームではかなわない。つまり、政治部のメモを書く「番記者」たちは、日本の政治の中枢に張り巡らされた、新聞社の神経細胞なのである。

 政局の報道を決める記事を書くのは、頭脳であるキャップやデスクである。もちろん、彼らも彼らなりの情報網によって、政局の方向性を常日頃から探っている。番記者たちは、まったく原稿を書かないわけではない。政界のこぼれ話を扱う、小さなコラムを書いたり、ときには政局の節目、節目では署名原稿を書くこともある。

 しかしながら、彼らの日常は「メモ上げ」と呼ばれる、情報収集に大半の時間が割かれている。事件や事故の真相に迫る調査報道において、社会部がチームを組んで情報の詳細なメモを蓄積することによって、取材対象を撃つことはある。あるいは、日銀総裁の人事や公定歩合などの金融政策の行方を探るために、経済部が同様のチーム取材を行うことはある。

●独特な、政治部の取材

 それらの取材と、番記者が担っている政治部の取材はまったく異なっている。ある意味では、彼らの日常がまったくの黒子なのである。

 しかも、経済部や社会部の記者たちが、事態の主要なプレイヤーとなることはほとんどありえない。つまり、事件や事故の方向性を動かすことはない。
 
 これに対して、政治部は「政局をつくる」という。番記者たちが収集した情報を集約して、これからどのような政局になるのか、その記事を書くのが政治部の担当である、という意味だけではない。

 政治部の記者たちは、与野党のトップクラスの要人たちの間に立って、情報の運び役も果たしているのである。政治学の教科書では、ときに政治部記者を政治のプレイヤーのひとりと位置付ける。

 政治家の側からみると、こうした番記者たちとどのようなコミュニケーションを行うのか、人間関係を築くのかが、政治生命にもかかわってくる。長期政権となった小泉純一郎内閣のもとでは、その役割を秘書の飯島勲氏が担った。

 それに続く、安倍晋三内閣はどうだったか?

 政治家と政治部記者の関係は、内輪の関係として、あまりはっきりとは外部から察せられないものである。ところが、安倍の場合は、表面的にみる限り朝日新聞と敵対し、産経新聞あるいは東京新聞の特定の記者と親密であったように見える。

●安倍元総理に訴えられた新聞記者

 テレビ朝日の番組として当時人気だった『サンデー・プロジェクト』の中で、安倍氏に絡む疑惑を指摘した、朝日新聞の編集委員を名誉棄損で訴えたことにも表れる。この訴訟はその後、和解となった。