NEW

合格者急増で“余った”公認会計士の救済策、年金基金への監査制にくすぶる懸念

【この記事のキーワード】

, ,

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

『巨額年金消失。AIJ事件の深き闇』
(角川書店/九条清隆)
 公認会計士といえば難関の資格で、顧問企業からは“先生”と呼ばれ、かつては「会計士様の機嫌を損ねれば、決算の承認がもらえない」(上場企業財務担当役員)と、接待の対象にもなっていた。しかし、いまや試験に合格したものの、会計事務所や企業に就職できず、資格に必要な2年間の実務を経験できない会計士浪人が数多いというから驚きだ。

 ある公認会計士は「これほど会計士が余ってしまった原因は、2003年に公認会計士法が改正され、06年の新試験から合格者が急増したことにある。日本公認会計士協会や監督官庁である金融庁が見込み違いをしてしまった」と憤る。実際、公認会計士合格者数は、05年まで毎年1500人にも満たなかったものが、改正公認会計士法が適用された06年の新試験から、合格者は一挙に倍の3000人を超え、インフレ状態となってしまった。

「金融庁と公認会計士協会は、国際会計基準(IFRS)の本格導入を念頭に、企業の会計士ニーズが高まるだろうと読んで、当時2万人であった会計士を18年までに5万人に増やす計画を立てた」(前出の公認会計士)という。しかし、肝心の国際会計基準の強制適用は、日本経団連など財界の反対でとん挫。会計士がだぶついてしまった。このため金融庁は、実務経験を積めない待機会計士の解消を目指して、「企業財務会計士」という新たな国家資格をつくり、一般企業への待機会計士の就職を促そうとしたが、与野党の反対で法案が雲散霧消してしまった。 

 これに慌てた金融庁は、11年度の公認会計士試験から合格者の大幅な絞り込みに着手。合格者は以前の年間1300~1500人規模に戻っている。それでも、試験に合格しても実務経験が積めず資格を取得できない「未就職者」の問題は残ったまま。

 そこで苦肉の策として今検討されているのが、会計士の税理士市場への進出である。会計士は、登録すれば税理士資格も取得できることになっており、現在会計士の1割程度が税理士の資格を取得している。これを大々的に進めて、だぶついた会計士を解消しようというのが狙いだ。しかし、これに日本税理士会連合会が強く反発、遅々として進んでいない。この惨状を憂慮した日本公認会計士協会は、監査法人に所属する会計士が企業に転職しやすくするための支援に乗り出しており、金融庁も後押しする。

●AIJ事件が追い風?

 そうした中、会計士の市場を拡大する追い風が吹こうとしている。AIJ投資顧問による年金資産の消失問題に端を発する年金基金への監査導入だ。AIJ事件では、詐欺まがいの資産運用の実態が把握できず、結果1000億円以上の年金資産が失われた。このため、年金基金に外部監査を導入することで、運用のチェック態勢を整備し、再発を防止しようというもの。日本公認会計士協会は3月中にも年金基金の監査ルールを定めるよう、作業を進めている。

 監査では、より詳細な決算書の作成を求め、非上場株式や複雑な金融商品などの評価方法を明記するほか、運用コストの明確化や予定利率など将来の支払いに備えた積立金の前提条件も注記させる。

 また、AIJ事件で問題となった金融派生商品が実際に存在するかどうか、取引相手に会計士が確認をとることや、運用を委託された運用会社の内部管理体制についても会計士が調べられるようルールが整備される。会計士の仕事は大きく広がる。

 監査導入は任意となる見込みだが、年金保険料を支払う加入者の信頼を得るためには、外部監査によるチェックが不可欠といえ、会計士業界では現在約1200を数える厚生年金基金と確定給付企業年金(規約型を除く)への浸透を期待する。

 しかし、厚生労働省は積み立て不足を抱える厚生年金基金について、解散もしくは他の年金制度への転換を求めており、存続できる厚生年金基金は1割程度と見込まれている。また、財政状況が厳しい企業年金は、新たなコストとなる監査には消極的との見方もある。会計士の市場がどこまで広がるかは未知数だ。
(文=森岡英樹/金融ジャーナリスト)

『ジムナストミニ(gymnast mini) GYMINI』


会計士になってもゆっくり寝れない?(ちなみにこれは枕です)

amazon_associate_logo.jpg