急増中のサービス付き高齢者向け住宅って何?人気の理由と正しい選び方
(写真は「木下の介護 HP」より)
「週刊ダイヤモンド 4/27・5/4合併特大号」の特集は「親子で選ぶ『老後の住まい』 老人ホームVS.サービス付き高齢者住宅」だ。
有料老人ホームなどの介護施設をしのぐ勢いで「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」と呼ばれる賃貸住宅の戸数が急増し、2013年2月に全国で10万戸(登録ベース)を突破している。にもかかわらず、“サ高住”は認知度が低く、介護施設とどう違うのか、あまり理解されていない。介護施設と“サ高住”のどちらが老後の住まいにふさわしいか、徹底比較した特集だ。
しかし、ビジネスジャーナル読者にはこういわれてもピンとこない人が多いだろう。わかりやすく解説すれば、自宅での独居が困難になった場合、特別養護老人ホーム、介護療養型医療施設、サービス付き高齢者向け住宅、住宅型有料老人ホーム、介護付き有料老人ホームなどといった住まいがある。
このうち、介護サービスから日常の生活支援サービスまで提供するのが有料老人ホームだが、入居者の自由度が制限される上に、入居費用は月払いで一人30万円以上かかるなど、出費も多い。
これに代わって、今、注目を集めているのが、高齢者向けに作られた賃貸住宅、「サービス付き高齢者向け住宅」(サ高住)だ。“サ高住”は安否確認と生活相談サービスが最低限備わったバリアフリーの賃貸住宅で、入居費用も有料老人ホームの半分以下だ。有料老人ホームなどの施設との最大の違いは、プライバシーや自由度が大きいこと。居室はバリアフリー仕様で日中はホームヘルパー2級の資格を持つ職員が常駐するほか、夜間は緊急通報システムで対応する。要介護度が高めの人が入居することも少なくないため、訪問介護事業所や通所介護事業所を併設し、住居と介護サービスを一体的に提供することが多いのも特徴だ。
この“サ高住”が急増する背景には、「多死時代」の「死に場所」不足の問題がある。超高齢社会となった日本では、25年に高齢者人口は3600万人超となり、高齢化率(総人口に占める高齢人口の割合)が30%を超える。高齢人口が増えて要介護者が増え、死亡率も上昇する「多死時代」に突入するのだ。
厚生労働省などのデータによると30年時点での死亡場所は医療機関が約89万人、自宅が約20万人、介護施設が9万人と試算される。しかし、47万人は現在の状況が続くならば、死に場所が見つからない“みとり難民”になってしまうのだ。
その受け皿として登場したのが、“サ高住”だ。国土交通省が今後10年間で60万戸の供給を計画し、1戸につき最大100万円の補助金や税制優遇策を始めたことで不動産会社のほか保険会社など異業種からの参入もあり、空前の建設バブルを迎え、13年2月に全国で10万戸(登録ベース)を突破しているのだ。
有料老人ホームを運営する介護事業者のなかには慎重派も多いが、木下工務店グループである「木下の介護」やベネッセスタイルケアといった介護大手も“サ高住”展開を始める。
事業者側にとってもこの住居には大きな可能性がある。当面は国からの補助金が期待できるうえに、介護付き有料老人ホームなどの施設に比べ建築上・運営上の規制が少なく、合理化の余地が大きいのだ。逆にいえば、入居者から見れば、「粗製乱造」「玉石混交」となっているのだ。
今回の特集『Part 1 老人ホームVS.サービス付き高齢者住宅』では、“サ高住”のよしあしを見きわめるポイントとして、施設長の面談と入居率をあげる。施設長の経歴や考え方が施設へ大きな影響を与えるためだ。また、入居率は有料老人ホームならば入居率の損益分岐点は85~90%。“サ高住”なら70%程度。歴史が浅いことを考慮しても、2年経過して50%未満である場合には、要注意だ。
『Part 2 サービス付き高齢者住宅の選び方』では、“サ高住”は賃貸住宅という一面があるのだが、入居者の借家権は無視されて、別のフロアに移転させられることも多いという。また、介護施設の感覚で経営されることが多く、介護保険収入が得られない自立者は稼げない客であるとして避けるところや、入居者の中心が生活保護受給者ばかりになる“サ高住”もある。この制度を食い物にした貧困ビジネスも横行しているのだ。
『Part 3 サービス付き高齢者住宅ランキング』では、居室の広さや設備、サービスなどを指標に、独自にアンケート調査を実施し、全国3000軒あるとされるサ高住のうち、1218物件を都道府県別にランキングし、入居費用などのデータも掲載している。
記事『入居費用と評価に相関性 快適な暮らしはカネ次第?』によれば、やはり1カ月の入居費用が高い“サ高住”は高い評価でランキングも上位にランクインしたという。利便性が高い立地で、一定レベル以上のハードとサービスを備えた住まいを手に入れるためには、カネ次第ということのようだ。
(文=松井克明/CFP)