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吉田潮「だからテレビはやめられない」(5月3日)

“不遜な女”主演連ドラ対決、説得力と激痛溢れるNHKが、フジ・日テレに勝利?

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『ご縁ハンター 公式サイト』(NHK HP)より
 主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組とその“楽しみ方”をお伝えします。

 傲岸不遜な女はドラマになりやすい。実際にはそんな女は存在しないけれど。

 だって、社会で、あるいは組織内で生きていくうえで、傲岸不遜に振る舞うことのマイナス面を痛いほど知っているから。そこまで女は阿呆じゃないし、純粋でもない。

 テレビドラマにおいては、「傲岸不遜な女=純粋で愚直で正義の味方」という立ち位置が人気だ。今季(4〜6月)の連続ドラマでいえば、『35歳の高校生』(日本テレビ系)の米倉涼子、『ガリレオ』(フジテレビ系)の吉高由里子、『空飛ぶ広報室』(TBS系)の新垣結衣あたり。確かにヒロインが「媚びない・なびかない・上から目線」キャラクターだと、胸がすく。

 でも、そのキャラクター設定自体にいつも違和感を覚える。本来、女はコミュニケーション能力と清濁併せのむ社会性が標準装備。ぶっきらぼうで上から目線の女は、現代社会においては必ずある種の「痛み」を伴わなければ現実味を帯びないわけだ。

 という意味で秀逸だったのが『ご縁ハンター』(NHK)の観月ありさだ。観月が演じるヒロインの体験した「痛さ」はなかなかに格別だった。37歳独身、実家暮らし、仕事にかまけて恋愛から遠ざかっていた観月が、母親(浅茅陽子)の再婚をきっかけに婚活を始める。

 ここで第一の痛さ。実母に結婚を先越され、家に残される空しさといったら、そりゃもう激痛。婚活や独身女の焦りをテーマにしたドラマは腐るほどあるのだが、嫁いでいく実母を見送るなんて仕打ちはかなり強烈である。

 超美人だがズケズケとモノを言う性格の観月は、意を決して婚活市場に飛び込むも、自分の評価価値が想定外に低くて愕然とする。視聴者としては「ウソつけ! 観月レベルがいたら男はみんなとびつくじゃん!」と思ってしまうところだが、「高齢&不遜&仕事命」の三重苦を痛いほど炙り出す手法でカバー。観月の痛みが前面に押し出されていた。

●NHKスペシャル並みの完成度?

 観月は同じ婚活市場で出会った男(岡本信人そっくりのEXILE・松本利夫)や地方出身で低収入のあか抜けない女子(イモトアヤコ)らと、もがき苦しみながらも「結婚の意味」を考えていく。岡本信人とイモトはモテないがために「卑下グセ」をもつ点が現実味たっぷり。このふたりのおかげで、作品の完成度はかなり高くなったと思う(『NHKスペシャル』並みに)。演技力というよりは空気感(と地味なお顔立ち)が功を奏した。

 一方、観月といえば、今まで結婚できなかった理由を「男がバカだから」と堂々と言っちゃったり、高収入であることを婚活サイトでは隠していた男(石黒賢)をフッたり、妙に純粋なプラトニック・ラブを婚活相手(丸山智己)に求めちゃったりで、不遜ゆえの痛々しさはどんどん倍増。不遜な女のマイナス面をきっちり、というか、たっぷり描いていたのがとてもよかったと思う。

 観月ありさの容姿はズバ抜けすぎていて、劇中でも常に浮いてしまうのだが、このドラマでは精神的にかなり貶められて、ちょうどいい塩梅に。婚活市場では「ハイスペック(主に高収入)を求める女」と「妊孕性の高い家政婦を求める男」が集まっているという現実もしっかり描かれていて、興味深かった。

 実在しない不遜な女をあえてドラマで描くならば、これくらいの痛みを背負わせないと説得力がない。3回シリーズがちょっと残念に思えるほど、痛みを伴うドラマだった。

 民放が同じような“不遜商法”を繰り返す中、NHKの斬りこみ方は斬新だったと思う。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

●吉田潮(よしだ・うしお):
ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)、「ラブピースクラブ」(ラブピースクラブ)などで連載中。主な著書に『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など。カラオケの十八番は、りりぃの「私は泣いています」、金井克子の「他人の関係」(淫らなフリつき)など。