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市場にくすぶるiPS関連ベンチャー上場機運…失敗続きの過去との違いとは?

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「日本網膜研究所 HP」より
 東証マザーズ市場を中心としたバイオ関連株の人気が、息の長いものとなっている。iPS細胞の生成に成功した京都大学の山中伸弥教授のノーベル賞受賞に端を発し、今年6月に発表される政府の成長戦略で再生医療などが中心になっていることが要因だ。一部に過熱感を指摘する声があるものの、関連銘柄の先高期待は依然強い。

 こうした中、市場ではiPS細胞関連のIPO(株式新規公開)をハヤす声も聞かれ始めている。iPS関連で上場がささやかれているのは、日本網膜研究所(網膜研)とリプロセルの2社。網膜研はiPS細胞を活用した網膜再生医療の研究を手がけ、世界で初めてiPS細胞を利用した治験(臨床試験)に乗り出すことを目指しているという。

 リプロセルはiPS細胞およびES(万能)細胞に関する世界最先端の研究成果を広く一般的に利用できるかたちで事業化することで、次世代医療を通じて人類の健康福祉に貢献することを目指すベンチャー。2009年にはヒトiPS細胞から作製した心筋細胞を世界で初めて製品化することに成功している。ファウンダー(創設者)は京都大学物質―細胞統合システム拠点長の中辻憲夫氏と東京大学医科学研究所・幹細胞治療研究センター長の中内啓光氏。

 網膜研の鍵本忠尚社長は、4月の外資系通信社のインタビューで、今後数年間で株式を公開したい、との考えを明らかにしている。リプロセルについては、IPOは市場の観測の域を出ていないが、資金調達需要は旺盛と見られている。

●注目集める出資企業

 市場で注目を集めているのは、この2社に出資している企業だ。医療用医薬品大手の大日本住友製薬(東証1部上場)が3月に網膜研の第三者割当増資15億円を引き受けると発表している。また、新日本科学(東証1部)やテラ(大証ジャスダック)も出資を公表している。新日本科学は動物を使った前臨床試験受託の最大手で、今回の出資で網膜研の網膜疾患を適応症としたiPS細胞技術の早期の臨床応用・実用化を支援するとしている。また、同社は今年2月に、京都大学iPS細胞研究所と「iPS細胞由来神経細胞による脳移植治療実用化に向けた安全性試験法の確立」について、3年間の共同研究契約を締結している。

 一方テラは、がん免疫療法のノウハウを医療機関に提供している。同社が手がけるがんを特異的に攻撃する樹状細胞ワクチン療法の将来性が期待され、株価が急騰している。リリースでは、網膜研との協働関係を通じて、最先端医療の発展に貢献する、などとしている。

●成功期待高める出資者の高いノウハウ

 また、リプロセルのホームページには大株主の記載がない。ただ、医療機器大手のニプロ(東証1部)が08年に株式の13.5%の取得を公表。当時の資料では、ES・iPS細胞を用いた共同事業展開が期待される、などとしている。07年にはバイオ専門商社のコスモ・バイオ(大証ジャスダック)がリプロセルの2%の株主になったことを明らかにしている。また、がん免疫細胞療法を手がける東大医科研発企業であるメディネット(マザーズ)も08年にわずかだが出資している。

 2000年代前半までのバイオベンチャーには、ベンチャーキャピタルが出資するのが一般的だった。しかし、バイオに関する知識やノウハウが乏しく、出資が成功するケースはまれ。多くのベンチャーキャピタルが損失を被り、撤退していった。この2社については、医療業界の先駆者が出資をしている点で、安心感も高い。ベンチャーにノウハウを提供できることで、業容の拡大やIPOが早期に行える可能性がある。また、IPOとなれば、株主として成長の恩恵を株高という点で享受できる可能性もある。

 この2社のニュースフローには、関心を払っておきたいところである。
(文=和島英樹/ラジオNIKKEI記者)