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「100円バーガー」断念で最安値の2倍に!

なぜマックはハンバーガー値上げに踏み切ったのか?新価格戦略のポイント

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安くなきゃ食べないよ…。(「マクドナルド HP」より)

 日本マクドナルドホールディングス(HD)は価格戦略の見直しに踏み切った。100円で販売していたハンバーガーを、5月7日から120円に値上げする。120円のチーズバーガーは150円になる。「100円マック」に代表される低価格路線からの転換だ。

 原田泳幸・会長兼社長は、消費者を「100円バーガー」などで呼び込む一方、クォーターパウンダーやメガマックなど値が張る新製品のついで買いで8年連続して既存店の売り上げを伸ばしてきた。しかし、2012年は“原田マジック”が不発に終わり、既存店売上高は昨年4月から今年3月まで12カ月連続で前年を下回っている。

【既存店売り上げの前年同月比の推移】(%)

12年4月   5月   6月   7月    8月     9月
△3.6   △11.0   △1.4  △4.1   △2.5   △3.6
12年10月  11月   12月  13年1月  2月    3月
△7.2   △3.1   △8.6  △17.0  △12.1   △3.6 
(△はマイナス)

 そこでビジネスモデルを見直すための2つの実験を行った。1つは値下げせずに新商品を投入しなかった場合の影響の調査だ。

 今年1月、全国の店で季節限定のメニューの販売を減らし、値下げキャンペーンを中止した。その結果、13年1月の既存店売り上げは前年同月比17.0%減、客数も同8.1%減となった。新設店を含む全店レベルでも同15.2%減という、衝撃的に悪い数字となった。

 もう1つの実験は、値上げした場合の影響。2000年代前半、「59円バーガー」など低価格路線で爆発的に集客を伸ばしたが、価格を上げると客離れが起き、業績が悪化した苦い経験をしている。

 このため今年1月から、九州・山口の5県の店舗で100円マックを120円に値上げして、影響を慎重に検証してきた。

 その実験結果を踏まえ、原田会長兼社長は今年2月の記者会見で、「値下げでは、永続的な利益向上につながらない」と価格戦略を見直す考えを示した。

 値下げを中止した実験結果の影響は大きかったが、値上げしても客足に目立った変化はなかったからだ。「ハンバーガーのような代表的な商品は固定客の購入比率が高く、値上げしても販売減への影響は限定的」(原田会長兼社長)。こう判断し、全国的な値上げに踏み切ったわけだ。

 新しい価格戦略のポイントは、単品価格を値上げする一方で、セットメニュー(ドリンク、ポテトのセット)の価格は据え置く点にある。目玉商品であった100円バーガーは120円に値上げする。定番商品のビッグマックも290~320円から330~360円に上げた。だが、ビッグマックのセット価格は610~680円を据え置く。

 原価率の高いハンバーガーの単品の注文数は減っても、セットメニューの注文数が増えれば利益を維持できるとソロバンをはじいた。収益を確保するために、固定客が多く、値上げしても相対的に影響が少ない方法を選んだと説明している。

 低価格で消費者を呼び込み、値が張る新製品で稼ぐというビジネスモデルからの大転換である。

 では、株式市場はマクドナルドの新しい価格戦略をどう評価したのか。

 株価は08年10月リーマン・ショック時に1291円の上場来安値をつけた後は、上昇基調が続いていた。デフレ銘柄の勝ち組という評価だった。12年12月期の連結決算が9年ぶりの減収減益となり、既存店の月次売り上げのマイナスが続いても、株価が下がることはなかった。

 4月26日には2824円と年初来の高値をつけた。リーマン・ショック時の安値(1291円)の2.2倍だ。最終的に株価を左右するのは収益だ。13年12月決算の第2四半期(13年4~6月期)に、最初の結果が出る。
(文=編集部)