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ソフトバンクの米国戦略に暗雲!? 米スプリント買収確実も拭えない”懸念”

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ワールドクラス。
Masayoshi Son Softbank Mobile Summit 2008 撮影: nobihaya「Wikipedia」より)

 ソフトバンクが注力していた米携帯電話3位のスプリント・ネクステルの買収で18日、競合となっていた米衛星放送会社ディッシュ・ネットワークが事実上、断念することを発表。これによりソフトバンクによる買収が確定的になり、7月にも世界3位の携帯電話グループになることを各メディアが大きく報じた。

 19日付の産経ニュースによれば、ソフトバンクはスプリント買収に向け、米外国投資委員会など米当局の承認に向けたロビー活動を含め「全精力を注いだ」(関係者)という。4月にディッシュが対抗買収案を発表したことで、買収額は201億ドルから216億ドルに引き上げたが、そもそもソフトバンクには「スプリント買収総額201億ドルを1兆6500億円(1ドル=82.2円)で為替予約した“円安差益”を追加投資に充てれば勝てる、との読みがあった」(同紙)。「当社が断然有利だ」と余裕を見せていた孫正義社長の想定内に収まったようだ。

 しかし、ソフトバンク側の懸念がこれで完全に払拭されたわけではない。同社は今後、米国での顧客開拓に本腰を入れる見込みだが、20日付の日本経済新聞は「スプリント傘下のクリアワイヤの争奪戦は続いており、戦略修正を迫られる可能性もある」と伝えている。

 クリアワイヤは、現在スプリントが50%強の株式を保有するデータ通信会社で、最大160メガヘルツ幅と大手携帯電話事業者並みの広い周波数を持つ、ソフトバンクにとっての「宝の山」(同紙)。クリアワイヤが持つ周波数はスプリント本体よりも多く、契約増に向けて通信回線の高速化を目指すソフトバンクとしては、是が非でも完全子会社として抱え込んでおきたいところだろう。20日にロイター通信が報じたところによると、ソフトバンクはこれまでのところ、「ディッシュがクリアワイヤの少数株式を取得しても大きな問題はない」という立場を示してはいるが、スプリントに近い筋は、ディッシュがクリアワイヤ株を取得すれば「非常に面倒な状況」になると話しているという。

 アナリストからは、完全子会社化ができなくなれば「コスト削減効果が得られない」「ディッシュがソフトバンクの経営計画を妨害するおそれがある」などの懸念の声が上がっているようだ。

 そしてクリアワイヤ側は、12日の取締役会で、ディッシュの資本参加を支持。スプリントは20日、クリアワイヤを完全子会社化するための買収額を1株3.40ドルから5.00ドルに引き上げることを発表し、優位に立ったと見られるが、これに対し、スプリント買収を断念したディッシュが簡単に引き下がるとも思えない状況だ。

 米国では少数株主が尊重される傾向があるため、ディッシュの存在はソフトバンクの米国戦略にとって不安要因になることは間違いない。このままでは周波数の活用が進まない可能性もあることから、ソフトバンク幹部は「のどに刺さった小骨」との見方を示しているという(日経新聞)。

 ソフトバンクはすでに、日本で携帯電話4位だったイー・アクセスを自社株で買収しており、経営再建中のウィルコムも7月をメドに連結子会社化する見通し。これにスプリントも加え、スマートフォンや設備投資の共同調達で相乗効果を追求すると見られるが、日経新聞が指摘しているように、契約件数が1億件を超えるベライゾン・ワイヤレス、AT&Tの米2強に対向するためには、スプリントをどう成長させるかが課題となる。巨額を投じた買収が吉と出るか凶と出るかは、いまだ不透明なままだ。
(文=blueprint)