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『風立ちぬ』喫煙騒動、そもそも本当に喫煙は健康に害なのか?喫煙者のほうが長寿?

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風立ちぬ 公式サイト」より
 日本アニメ映画界の巨匠・宮崎駿監督の5年ぶりの新作劇場映画、スタジオジブリ製作の『風立ちぬ』(東宝)が、7月20日の公開から映画観客動員ランキングで5週連続首位を獲得し(興行通信社調べ)、30日間で累計動員580万人、興収72億円をそれぞれ突破し、大ヒット上映中だ。

 そんな『風立ちぬ』内で頻出するタバコの描写に対し、NPO法人・日本禁煙学会(以下、学会)が苦言を呈し、波紋を呼んでいる。
 
 学会は8月12日付で制作担当者へ送付した要望書「映画『風立ちぬ』でのタバコの扱いについて(要望)」の中で、

・『風立ちぬ』は、177カ国以上が批准している「タバコ規制枠組み条約」内のあらゆるメディアによるタバコ広告・宣伝の禁止に違反している。
・肺結核で伏している妻の手を握りながら喫煙するシーンは問題である。
・学生が「タバコくれ」と友人にタバコをもらう場面などは未成年者の喫煙を助長し、「未成年者喫煙禁止法」に抵触する恐れがある。

と指摘し、「映画制作にあたってはタバコの扱いについて、特段の留意をされますことを心より要望いたします」と締めくくっている。

 人気映画に苦言を呈するこの要望書はさっそく賛否両論の議論を呼び、脳科学者の茂木健一郎氏は「他人が作った映画の表現、違う時代の場面の描写にまで口を出す権利があると思うのは、勘違い。禁煙ファシズムだと言われても仕方がない」と自身のTwitterで違和感を表明しているほか、作曲家・すぎやまこういち氏が代表を務める喫煙文化研究会では、「当時の状況を再現するに当たっては極めて一般的な描写である」「たばこという、映画とは全く関係のないところで、表現の自由を奪うような要望に反対する」として、反論を展開している。

 しかし、騒動が大きくなっても学会は要望書を撤回せず、8月16日にはホームページ上に「日本禁煙学会の見解」として、以下のように要望書の内容を補足している。

「喫煙が幾度となく肯定的に表現されていることは、命が最も大事だというこの作品の一番大事なメッセージを損なう、とても残念な点になっています」
「SNS上では、この映画を見てタバコを吸いたくなったという人が多数おられます」
「今回の日本禁煙学会の要請を、表現の自由の侵害だと批判する向きがありますが、それはまとはずれです」

 この議論の是非はともかくとして、学会の主張に賛成する側と反対する側ともに「タバコは健康を害する」という認識は共通しているようであり、多くの日本人の間で常識化しているといえよう。実際にタバコの宣伝に関する規制は年々厳しくなり、飲食店や公共の場でも喫煙スペースは削減の一方で、愛煙家にとっては肩身の狭い世の中となっている。

●喫煙者のほうが長寿?

 だが、最近のこうした風潮に反し、「タバコは健康に害ではない」「喫煙者のほうが非喫煙者より長寿だ」という主張も専門家の間から出ている。

 まず、「タバコ害悪論」に真っ向から対立するのが、中部大学教授の武田邦彦氏。武田氏は『早死にしたくなければ、タバコはやめないほうがいい』(竹書房)という、愛煙家でもにわかには信じられない本までも上梓しているほどだ。本書によれば、この40年間で男性の喫煙率は1/2になっているにもかかわらず、肺がんによる死亡者数は約10倍に増加しており、その因果関係については「説明がつかない」という。

 また、武田氏は、喫煙と肺がん死率の因果関係を証明するデータは存在しないばかりか、喫煙者のほうが非喫煙者より自殺者が少ない、喫煙者のほうが風邪をひきにくいという統計データもあり、武田氏の調査によれば、喫煙者のほうが非喫煙者よりも「やや長寿」だと主張している。

 獨協医科大学の名取春彦氏も、タバコは健康を害するという常識に強い違和感を持つ人物。現在の禁煙運動の裏付けとなっている国立がんセンターの疫学部長・平山雄氏の研究について「『たばこは有害だ』という結論が先にあり、それに結びつくデータしか採用していない」と疑問を呈し、「現段階では、たばこが酒や他のものよりも健康に影響を与える、とは断言できない」と結論付けている(『たばこは有害であるという根拠は怪しい』<サイト「愛煙家通信」より> )。

 ちなみに厚生労働省では、タバコの健康に対する影響について「多くのがんや、虚血性心疾患、脳血管疾患、慢性閉塞性肺疾患、歯周疾患など多くの疾患、低出生体重児や流・早産など妊娠に関連した異常の危険因子である」と警鐘を鳴らし、「社会全体では少なくとも4兆円以上の損失があるとされている」と経済的な損失を試算している。

「喫煙しないこと」を採用の条件に定める企業も増え始めており、喫煙者には強い向かい風が吹いている。しかし、その科学的根拠については、専門家の間でも異論があるということは知っておくべきかもしれない。そして少なくとも、武田氏や名取氏のように、異論の声を上げる余地は残されているようだ。
(文=萩原雄太)