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吉田潮「だからテレビはやめられない」(9月9日)

東京五輪プレゼン、「原発汚染水問題ない」は世界への大嘘では?金満アピールにも疑問

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「日本オリンピック委員会 HP」より
 主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組とその“楽しみ方”をお伝えします。


 いやあ、東京になっちゃったんだなぁ、2020年夏のオリンピック。個人的にはオリンピックは世界のどこで開催されようと感動を与えてくれるし、興味がある競技のテレビ中継は必ず観るし、何も問題山積みの日本でやらなくてもいいのになと思っていた。アスリートだけでなく、芸能人まで巻き込んで、大金使っての招致活動には正直疑問を抱いていたし。

 ひとまず、ネタとしては東京のプレゼンだけチェックしておこうと思っていた。各局がこぞってオリンピック騒ぎだったが、私の大好きな土曜ドラマ『夫婦善哉』(NHK)を観た後、そのまんま同局で固定。全体的な感想としては「もやもや」である。

 いや、プレゼン全体はテレビで観ていて、素直に面白かった。フェンシング選手の太田雄貴のスピーチは爽やかで親近感もあった。アスリートならではの説得力のある言葉選びだったし、とても好感が持てた。昔懐かしの“斜め45度”から真正面に体勢を向き変え、フランス語で「オモテナシ作戦」を成功させた滝川クリステルのスピーチも、色気と覇気のバランスがちょうど良かったと思う。プレゼン映像に出てきた小谷実可子の人工知能つきロボットっぽいガイドっぷり(往年の楠田枝里子を彷彿とさせる)も興味深いものがあった。東京五輪招致委員会の竹田恒和理事長も、落ち着きのある柔和な印象が信頼感を高めたように思える。全体的には完成度の高いプレゼンだったと、素直に拍手を送りたい。

 素直に受け止められなかったのは、“TOKYO金満”アピール。猪瀬直樹都知事が興奮した顔で、妙な抑揚をつけて、「われわれは開催資金45億ドルを確保している、しかも銀行に、現金で!」と言い放ったときの会場のどよめき。「オレさまのところはゼニがうなるほどあるんだぜ、しかも現金でな!」と赤ら顔の成金オヤジが左団扇で豪語しているような印象。あれを強気の姿勢と礼賛するのなら、それはそれでいいけれど。個人的にはちょっと好感を持てないスピーチだった。
 
 で、もやもや点はふたつ。ひとつは、東京がオリンピック招致でいかにも盛り上がっているかのようなアピールっぷりである。私は東京都民だが、周囲で盛り上がりを感じたことは一切ない。あくまでテレビ局が盛り上がっているだけで、都民はわりと冷静&平静だ。

 そして、汚染水漏れの福島第一原発に対する驚くべき見解。東京新聞愛読者の私は、国家レベルで世界相手に大嘘をついている現状に戦慄した。「状況はコントロールされている」「福島第一原発港湾内で完全にブロックされている」「将来的にも問題ない」。「絶対」「完全」の連呼は、詐欺師と宗教と自己啓発セミナーの常套句なんだよなぁと思いつつ。とはいえ、これは私の個人的見解。テレビでネガティブな発言をする人がいるはずない。

 ……と思っていたら、いた。プレゼンを生中継していた『サタデースポーツ』(NHK)でゲスト出演していた伊藤公さん(元JOC企画専門委員)が、シレっとサラっとチクっとコメント。全体的にはプレゼンとして非常によかったと褒めながらも、「ちょっと物足りない部分も」「偉大なる観光案内という印象」「(原発に関する日本側の回答に)あれでよかったのかと疑問は残る」と正直な感想を付け加えたのだ。うんうんと思わずうなずいてしまった。

 ともあれ、やると決定したワケだから、文句言ったってしょうがない。開催の成功をささやかに祈り続けよう。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

●吉田潮(よしだ・うしお):
ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)、「ラブピースクラブ」(ラブピースクラブ)などで連載中。主な著書に『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など。カラオケの十八番は、りりぃの「私は泣いています」、金井克子の「他人の関係」(淫らなフリつき)など。