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サントリー、波紋呼ぶ「次期社長は創業家以外も」発言の真相と行方〜カギは大型M&A

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サントリーHD本社(「Wikipedia」より/663highland)
「(持ち株会社の)次期社長に創業一族以外から選ぶ可能性がある」

 8月2日付日本経済新聞のインタビューでサントリーホールディングス(HD)の佐治信忠社長(67)が行った発言が、波紋を広げている。7月3日に東京証券取引所第1部に新規上場したサントリーグループの中核企業で、清涼飲料などを手掛けるサントリー食品インターナショナル(SBF)の鳥井信宏社長(47)が、後継社長に最も近いとみられていたからだ。

 佐治氏は「次の世代となる(自身のいとこの子である)信宏は上場企業の社長に(当面)とどまる。もちろん(信宏氏が実績を積むことを)待つ選択肢もあるが、今のままでは誰か一族以外がなる可能性が高い」と創業家にこだわらないことを示唆した。

 これまでにも佐治氏は「後任は創業家以外」と口にしてきた。

 2012年2月の決算発表後、報道陣に対し、次の社長に求める資質にグローバル感覚を挙げ、「創業家以外の起用もありえる」と述べた。13年2月の決算会見では、「(社長としての会見は)来年のこの場が最後」と述べ、14年中にも社長を交代する考えを明らかにした。後任については「グローバルに活躍できるエネルギーが必要」と強調。創業家にはこだわらないが「創業家に優秀な後継者がいれば(創業家でも)いい」とした。持ち株会社の取締役でもある信宏氏を念頭に置いた発言と受け取られた。

●SBFの無難な船出

 サントリーは創業100年を超え、会社が大きく成長しても同族経営を貫いてきた。創業者の鳥井信治郎氏の息子たちのうち、長男の吉太郎氏が早世したため、姻族である佐治家の養子になっていた次男の佐治敬三氏が家業を継いだ。

 佐治信忠社長は敬三氏の長男。吉太郎氏の孫が鳥井信宏氏である。両者は分家と本家の関係にある。佐治信忠氏から鳥井信宏氏へ、持ち株会社の社長が交代すれば、分家から本家への大政奉還ということになる。

 信宏氏は1989年3月慶應義塾大学経済学部卒業、米ブランダイス大学国際経済・金融学修士課程修了。日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)に6年勤務したあと、97年4月サントリーに入社。「ザ・プレミアム・モルツ」の戦略部長としてモンドセレクション最高金賞を3年連続で受賞した。09年にはM&Aチームを率いて欧州の清涼飲料メーカー、オランジーナ・シュウェップスを33億ドルで買収した。

 そして、持ち株会社体制への移行に伴い、09年4月にサントリーHDの執行役員、常務、専務を歴任後、11年1月にサントリー食品インターナショナルの社長に就任した。同社は8月6日、東証1部に上場してから初の決算となる13年1~6月期の連結決算を発表した。売上高は前年同期比10.8%増の5179億円、営業利益は同25.9%増の276億円、純利益は同95.7%増の119億円だった。主力ブランドの茶飲料「伊右衛門」や機能性飲料「GREEN DA・KA・RA」が伸びた。

 13年12月期通期の売上高は1兆1300億円(前期比13.9%増)、営業利益は750億円(同28.3%増)と従来予想を据え置いた。株価は公開価格の3100円を上回って推移しており、ひとまず無難な船出となった。

 SBFのPER(株価収益率)は30倍超。キリンホールディングスの16倍、アサヒグループホールディングスの19倍に比べて高い。米コカ・コーラやペプシコも19倍前後だから、割高感はある。当面の節目、3800円を超えるには、M&A(合併・買収)などで実績を積み重ねる必要がありそうだ。

●佐治社長=青山副社長ラインでM&A戦略推進か?

 創業者一族で本命とみられている信宏氏が、持ち株会社の社長には「時期尚早」というなら、佐治氏は誰を後継者に想定しているのか?

 前出のインタビューで佐治氏は「子会社の上場で調達した資金を含め1兆円程度の戦略投資を想定している。今考えているのは洋酒部門のM&Aだ」と語っている。1兆円程度のM&Aを実行できる人物が後継者に相応しいというわけだ。

 サントリーHDには代表権を持つ取締役が3人いる。佐治社長と鳥井信吾副社長(60)、同族以外の青山繁弘副社長(66)である。信吾氏は創業者・信治郎氏の三男・道夫氏の息子で、信忠氏のいとこに当たる。一方、青山氏は69年、神戸大学経営学部を卒業してサントリーに入社した生え抜き。マーケティング部門、宣伝部門担当役員、酒類カンパニーの社長を歴任。持ち株会社体制に移行した09年2月、サントリーHDの副社長に就いた。経営企画、財務経理、人材開発等、コーポーレート部門を担当し、サントリーグループのM&Aやグローバル化の先頭に立ってきた。

 09年から10年にかけて、世紀の大合併といわれたサントリーHDとキリンHDとの経営統合交渉があった。サントリー側は青山副社長をトップとし、部長クラスを中心に15名がM&Aチームをつくり、交渉窓口となった。だが、サントリー創業家の資産管理会社、寿不動産の統合後の持ち株比率をめぐり意見が対立し、統合計画は白紙に戻った。

 青山副社長は佐治社長の右腕として、M&Aに辣腕を振るってきた。だとすれば、佐治社長=青山副社長ラインでM&A戦略を推進することも考えられる。

 佐治氏の「後継者は創業家以外も」発言で、サントリー周辺は慌ただしくなってきた。
(文=編集部)