コンビニのおでん、まだ暑い時期に販売の謎〜遅いと人事査定に響く、店舗は大赤字?
コンビニ歴21年・バイヤー歴15年の筆者がコンビニを選ぶ視点から、お得情報、裏ワザまでを伝授! バックヤード事情を見れば毎日の生活が変わる――
<今回のテーマ>コンビニとおでん
毎日暑い日が続く。ここ数年、お盆明けから9月中旬ごろまでは、残暑というよりも夏本番というような暑さが続くことが多い。そんななか、コンビニ各社では、お盆明けからおでん全品70円セールを展開するなどして、おでんの販売を一斉にスタートする。
こんなにくそ暑い中で、熱々のおでんを食べるというのは、世の中に“やせ我慢大会”の需要があるのかと勘繰りたくもなるこの早期展開はなぜなのか、ご存知だろうか?
これらは、セブンイレブン・鈴木敏文会長の『固定概念にとらわれないお客様の新しいニーズを掘り起こす、いち早くお客さまに展開を認知させることにより、シーズンピーク時の販売の山を最大限にもっていく』という考えをもとにした、“シーズン商品の先取り展開”という戦略で、業界ナンバーワンのセブンイレブンが、1990年代前半から始めたと言われている。
これに対して、ローソンやファミリーマートなど2番手以下のチェーンも、その展開を指をくわえて見ているわけにもいかず ほとんどのチェーンがこの時期におでんの販売をスタートし、季節感のないおでん売場が全国的に登場するのである。
この時期の各コンビニでは、こうしたおでん早期展開が本部指導の優先順位の一番になっており、これらが徹底されるかが、店舗指導員やエリア統括マネジャーの人事評価に直決するため、いまではすっかり無意識のうちにこのおでん展開がルーチン業務となっている。コンビニおでんの早期展開は、トップダウンと同調圧力の結果といえるだろう。
だが、実はこのおでんの早期展開に関しては、ほとんどのオーナーやSVなどの店舗指導員は疑門をもっている。それは、おでんが年間通して赤字である店舗が多く、特に早期展開の期間は、キャンペーンによる割引や、食べたくもないお客のニーズ不一致から赤字幅が増えるからだ。
実際、シーズン中の1日あたりの平均販売数は、業界トップのセブンイレブンで90個前後、そのほかのチェーンで40個弱と言われているが、容器や電気代、人件費、商品廃棄コスト、本部へのチャージなどを考えると、平均1日100個以上販売しないともうけがないカテゴリーと言われている。フランチャイズの個店では、セブンイレブンでさえも半分強の店舗が赤字で、ほかチェーンになると、ほとんどの店舗で年間通して赤字と推察される。
もちろんもうからなくても、ビールなどの関連販売も見込め、固定客の割合も多いので、おでんだけの収益で考えるべきではないとの意見もあるが、少ない人数を対象している上、清掃や仕込みなどで1日平均2時間強の手間がかかり、カテゴリーだけを見れば赤字なので、店舗オーナーが疑問に思うのも、当然だろう。
さらに販売時期にしても、おでん売り上げのピークは、寒暖の差を感じる10月下旬~11月第2週ごろなので、決して寒い季節に売れるピークが来るわけでもない。というのも、11月2週目以降は、外食や家庭で鍋物などの温かい食事が一般的になるので、コンビニでちょっとあったかいものを……という気にならないようだ。そして、1月にもなると売上も下降し始め、本部からのチェックもなくなるので、コンビニでのおでんの展開が除々に終わり出すのである。