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SBI再参入で激化する、ネット生保業界の舞台裏〜一段と過熱する価格競争

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SBI再参入で激化する、ネット生保業界の舞台裏〜一段と過熱する価格競争の画像1SBIホールディングス本社が所在する泉ガーデンタワー(「Wikipedia」より/Chris 73)
 SBIホールディングス(以下、SBI)は、インターネット上で生命保険商品を販売するネット生命事業へ再参入する方針を明らかにした。英保険大手、プルデンシャル生命保険傘下のピーシーエー生命保険(東京・港)を買収する。同社の全株式を8500万ドル(約85億円)で取得。ネット生命として再出発する。

 2013年4~6月期決算発表の席上、SBIの北尾吉孝社長は「証券、銀行、保険の3大コア事業の相乗効果を発揮させたい」と述べた。SBI証券、住信SBIネット銀行、SBI損害保険に生命保険が加わることで業容の拡大を目指す。

 ピーシーエー生命保険は1990年7月の設立。資本金は475億円で、プルデンシャル生命保険が100%保有している。年金保険の販売不振で10年2月から新規契約を停止し、13年3月期末時点で13万件超の既保険を保有。同期の経常収益は308億円、当期純利益は40億円。総資産1703億円で生保業界では下位だ。

 SBIは生命保険事業で一度挫折している。06年7月、仏保険大手・アクサの日本法人・アクサジャパンホールディングと合弁でインターネット専業の生命保険会社を立ち上げることで合意。同年6月、SBI、アクサジャパン、ソフトバンクの3社で生保設立のための準備会社を立ち上げていた。08年3月、SBIアクサ生命保険に商号を変更。同年4月、金融庁から生命保険業の免許を取得して営業を開始した。

 しかし、合弁事業は2年で破綻。10年2月、SBIは保有する株式55%すべてをアクサジャパンに譲渡して合弁事業を解消。生保事業から撤退した。合弁解消に伴いネクスティア生命保険へ社名を変更し、13年5月にはアクサダイレクト生命保険に再度、社名を変えている。

●激化する価格競争

 ネット生保とは申し込み手続き(保障プランの作成から申し込み)がインターネットでできる生命保険会社のことだ。解約もネット上で行える。効率的な運営(少人数、ペーパーレス、営業用店舗をもたない)が特徴となっている。

 ネット生保専業企業は、東証マザーズに上場しているライフネット生命保険(東京・千代田)とアクサダイレクト生命保険(同)の2社である。安い保険料を武器に、着実にシェアを拡大してきた。

 13年6月末時点でライフネット生命保険の契約件数は18万591件で、契約高は1兆5520億円。アクサダイレクトが契約件数5万698件、契約高3903億円となっている。再度参入するSBIは保険料を安く抑える方針で、ネット証券で手数料の引き下げ競争が激化したように、ネット生命の価格競争も一段と激しくなる。

 SBIの13年4~6月期決算はIFRS(国際会計基準)導入後、初めて前期と比較できるようになった。営業収益は前年同期比18.9%増の801億円、営業利益は同8倍の312億円(前年同期は39億円)、四半期包括利益は221億円と黒字に転換した(同12億円の赤字)。

 赤字事業であるSBI損保は16年3月期の通期黒字、SBIカードは15年3月期中の黒字化のメドがついたとしている。SBIの北尾社長は「14年3月期の通期の連結営業利益は、日本会計基準での過去最高益を記録した06年3月期の496億円を大幅に上回る」と強気の見通しを語った。

●SBI懸念材料は韓国の銀行

 SBI最大の案件は、韓国貯蓄銀行最大手の現代スイス貯蓄銀行の買収といわれている。社名に「現代」がついているが、韓国を代表する自動車メーカー・現代グループとはなんの関係もないため、勝手に社名を使われたと現代グループから訴えられている。貯蓄銀行とは、信用金庫の機能をもつ小口金融機関のことである。

 韓国の金融当局は、現代スイス貯蓄銀行グループを大株主への不法貸し出しの容疑で摘発。経営陣をはじめ幹部が処罰された。同行の12年9月末の国際決済銀行(BIS)基準の自己資本比率は1.8%。増資など経営改善を履行する条件で、13年5月まで処分猶予となっていた。SBIは13年3月、2375億ウォン(約204億円=当時の為替レート)の増資を引き受け、現代スイス貯蓄銀行を買収。BIS基準自己資本比率を7%超に引き上げた。

 韓国メディアは5月、金融当局の検査の結果、追加不良債権が見つかり、3765億ウォン(約345億円)の損失が見込まれると報じた。これで自己資本(7%)を確保することができず、SBIは追加の増資に追い込まれた。

 SBI本体の決算発表の席上、現代スイス貯蓄銀行についても言及された。13年4月に役員を派遣し、不良債権の精査を実施した結果、「放漫経営の実態が明らかになった」としながらも支援は継続するとした。「当社(SBI)が策定した経営改善計画が韓国金融委員会から承認されることを前提に、2462億ウォン(約217億円)の増資の引き受けを決定した」とも説明。さらに9月1日に「SBI貯蓄銀行」に社名を変更、12月末までに1820億ウォン(約161億円)の追加増資の引き受けを検討していることを明らかにした。これで同行の自己資本比率は7%以上に回復するとみている。

 SBIが同行の買収に要した金額は、日本円で582億円に膨れ上がった。出資比率51%をキープしながら、持ち株の一部を韓国国内の金融法人に売却することで資金回収を図るとしているが、前途は多難との見方が強い。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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