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アフラック・日本郵政提携の衝撃、生保業界から怒り噴出「TPPの犠牲」「民業圧迫」

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日本郵政本社が所在する日本郵政ビル(「Wikipedia」より)
 日本郵政とアメリカンファミリー生命保険(アフラック)が提携を拡大した。これまで全国1000の郵便局で扱っていたアフラックのがん保険を、今秋から順次2万ほどまでに広げる。がん保険以外の商品販売も検討する方針とみられる。一方、以前から提携関係にあった国内最大手である日本生命保険は提携を反故にされた格好で、業界内からは怒りの声も漏れ伝わってくる。

●「ニッセイは努力不足」(西室郵政社長)

 日本郵政とアフラックが帝国ホテルで提携会見に臨んだ 7月26日の夜。日本生命は両社の提携について、短い文書を発表した。業界に詳しい記者は驚きを隠さない。「文書には『遺憾』の文字が入っていたが、企業のリリースではまれ。どういう文書を発表するか、社内でも相当もめたと聞く。会見で日本生命との提携について聞かれた日本郵政の西室泰三社長が、『(日本生命の)努力不足』と異例のコメントを発したことが引き金になり、怒りを隠さなかったのだろう」。

 実際、これまで日本郵政と包括的な提携関係にあった日本生命との関係を無視してまでアフラックと提携拡大に踏み切った背景に、日本生命の「努力」が関係のなかったのは、業界関係者ならば明白な話だ。

 日本郵政は郵政民営化改正法成立のタイミングの前後から、新規事業を模索してきた。そのひとつが傘下のかんぽ生命による医療保険への進出。提携関係にあった日本生命のサポートを受けて、いつでもがん保険を販売できる段階にあった。

 ここに横やりを入れたのがアフラック。医療保険分野は、外資と中堅以下の国内生保に長らく販売が限られていた。そのため、アフラックはがん保険で国内シェア7割を握るが、かんぽ生命が巨大ネットワークを活かして自社商品の販売攻勢に出たら、アフラックはシェアを食われるのは間違いない。焦ったアフラックは「政府出資の日本郵政のがん保険は民業圧迫だ」と主張し、かんぽ生命のがん保険販売は棚上げされていた。

●TPP交渉の手土産?

 それが今回、急転直下で日本郵政は自社商品の販売を諦め、目の上のたんこぶであったアフラックとの提携に動いたのだから、日本生命以外の国内大手生保は驚きを隠せない。大手生保幹部は「アフラックとの急接近はTPP交渉が背景にあるのは間違いない。交渉が始まる日米二国間協議での手みやげとして、TPP交渉に出遅れた日本政府がアメリカ側に譲歩したのだろう。ただ、特定の一民間会社に公的ネットワークを独占的に使わせるのはいかがなものか。アフラックこそ民業圧迫ではないか」と指摘する。

 少子高齢化や単身世帯の増加で、日本国内の生保市場は大きく変化する。各社は死亡保険に加え、医療保険の販売を強化している。こうした中、日本郵政とアフラックはがん保険にとどまらず、他の医療保険商品についても郵便局販売を期待しているというだけに、競合他社の心境は穏やかでないはずだ。

「はらわたが煮えくりかえっている」。冷静沈着で知られる日本生命の筒井義信社長は、会見の数日後に開かれた同社OB会の席上でも、怒りを隠さなかったという。日米の政治的な駆け引きの道具にされた生保業界だが、今後予想される混合診療の拡大などで、外資系が今以上に攻勢をかけてくるのは必至。80年代に巨額の運用マネーで世界を席巻した日本の生保業界が今、大きな転換点を迎えようとしている。
(文=編集部)