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建設業界、なぜ東京五輪バブル期待外れで低調?人材不足、資材高騰、消費増税が足かせに

文=編集部

建設業界、なぜ東京五輪バブル期待外れで低調?人材不足、資材高騰、消費増税が足かせにの画像1「Thinkstock」より
 9月7日に2020年の東京五輪開催が決定してから約3カ月を経過し、株式市場では一時急騰した五輪関連銘柄の人気が鎮まった。当初大きく買われた大手建設株は急騰後にさえない動きとなり、市場関係者の間では「ご祝儀相場が終わった」との見方が広がっている。

 五輪相場を引っ張ったのが大成建設である。前回(1964年)の東京五輪のメイン会場である国立競技場を施工した大成建設の株価は、五輪開催発表前の9月6日は407円だったが、10日には535円と7年5カ月ぶりの高値を付けた。ちなみに、前回東京五輪が始まった日に当たる10月10日の終値は484円。

「新国立競技場の受注が決まるまでは、大成建の株価は強い展開が続く」(中小証券)との見立てから、一部で91年以来の4ケタ(1000円)まで上昇するのではという声も聞かれたが、間もなく利益確定売りが目立ち始め、株価は500円を割り込んだ。

 東急建設の株価も急騰した。9月6日の終値240円から、18日の高値800円まで3.3倍に跳ね上がった。東京五輪の決定後は動きが一変し、9月9日からは連日のように年初来高値を更新し、急騰が続いた。9日から17日まで6営業日中5営業日でストップ高(1日の制限された値幅の上限まで値上がりした状態)となった。18日まで大幅な値上がりを続けたのは東急建設だけだった。

 東京五輪の会場や施設の要所のひとつが渋谷。東急建設は東急グループの本拠地である渋谷の開発に強い、というのが急騰した理由だ。10月に入ってからはさすがに騰勢は鈍り、500円台で推移している。ちなみに11月13日の終値は539円(10円安)だった。東急建設の飯塚恒生社長は「東京五輪の開催決定後、株価は一時3倍以上に上昇した。これまでの渋谷開発の実績に注目が集まったのではないか。渋谷再開発計画については、五輪開催をにらみ、前倒しの動きが出てくるだろう」と語る。

 清水建設は10月10日に473円まで買われた。五輪決定直後の9月10日に年初来高値の536円を付けたあと、450円前後に反落していたが、再び上昇した。宮本洋一社長が10月8日付日本経済新聞の取材で、東京五輪の開催効果によるインフラ工事などで「3、4年後に1500億円程度の増収が見込める」「受注額は今期(14年3月期)比1500億円増の1兆2000億円に達する」とコメントしたことが材料視された。大手ゼネコンの首脳が、東京五輪での受注見通しに言及したのは初めて。だが、受注増の見込みはさほど大きくはなかった。清水建設は東京五輪の本命ゼネコンでないことがわかったという辛口の見方が出ており、11月13日の終値は483円(3円安)だ。

 東京五輪の経済効果は3兆円以上、約4500億円の予算が投下されるといわれているが、この数字は20年まで7年間のトータルの金額で、1社あたりの受注額は単純計算では大きくならない。

業績見通しも相次ぎ下方修正

 脱デフレを目指す安倍晋三政権の経済政策・アベノミクスの効果や東日本大震災の復興需要などを支えに、大手ゼネコン各社は14年3月期に営業増益を見込んでいたが、人手不足、資材高騰から慎重な見方に変わった。鹿島は連結営業利益を従来予想の310億円(前期比68%増)から180億円(同3%減)に大幅に下方修正した。大成建設は前年同期比12%増の400億円、清水建設は18%増の155億円を予想。大林組は低採算案件の計上が響き、32%減の240億円と営業減益の見込みだ。

 加えて、各社の予想PER(株価収益率)は20~30倍に達し、株価に割安感は乏しい。ドイツ証券は9月25日、大手ゼネコン各社の投資判断を格下げした。東京五輪の代表銘柄である大成建設については、「ホールド」(所有する)から「セル」(売り)に格下げ、目標株価は410円を継続した。消費税の引き上げに伴う民間設備投資の減速で、得意とする民間からの受注は盛り上がることなく、下期にかけて失速する可能性が高いと判断したためだ。

 鹿島、清水建設の投資判断も「ホールド」から「セル」に、大林組は「バイ」(買い)から「ホールド」に格下げした。

 建設株は東京五輪の開催に加え、リニア新幹線の着工という追い風が吹いた。平成バブル崩壊後、一度もなかった「建設株バブル相場」がやってくると期待する向きがあった。しかし、消費増税が決まり、当初の熱気は冷めてしまった。民間設備投資の減速という逆風が吹きつけ、建設株の上昇は長続きしないという見方が強まっている。

 さらに、スーパーゼネコンの13年4~9月決算が発表になったが、労務費の上昇や鋼材などの資材価格の高騰で採算が悪化した。足元のコスト高の状況は東京五輪まで続くといった厳しい見方まで出ている。

 こうした状況になると、「株価が動くから買う」という材料株の感覚で買うしかなくなる。10月30日には西松建設、戸田建設など中低位の10銘柄が年初来の高値を更新したが、多くの銘柄が長いこと安値で放置されており、一時期低位の建設株は“ゾンビ銘柄“などと酷評された。

 20年の東京五輪開催に向け、今後インフラ整備が本格化する中、建設関連株がどのような動きをするのか、市場の関心が集まっている。
(文=編集部)

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