再入札が行われたのは、青果棟と水産仲卸売場棟、水産卸売場棟の建設工事。昨年11月の1回目の入札で、東京都は3件の予定価格を計630億円に設定していたが、資材費や人件費高騰を理由にJVが辞退し、入札は不成立となった。都は昨年12月、予定価格を6割(400億円)引き上げ、あらためて公告。落札額は計1034億円に跳ね上がった。
長らく構造不況業種といわれた建設業界が、建設バブルに沸いている。東日本大震災からの復興事業やアベノミクスの一環である国土強靭化計画による公共工事に加え、景気回復の波を受けて民間でもビルやマンションの建設計画が相次いでいるためだ。2020年に開催される東京五輪特需がこれに加わる。
だが、現実には建設バブルを手放しで喜んではいられない状況が続く。建設現場の人手不足が一段と深刻になってきたからだ。東日本大震災の復旧工事や公共事業の増加で、現場の技能者が不足し、労務費の上昇や工事遅れが起きている。建設費高騰を受け、自治体などの公共工事の入札で建設会社が決まらない入札不調が相次いでいる。
これから東京五輪に向けた都市整備が本格的に始まる。新国立競技場をはじめ、選手村、武蔵の森総合スポーツ施設など五輪施設が次々と建設される。新国立競技場の建設費は当初1300億円と見込んでいたが、設計通りだと3000億円に膨らむため、床面積を減らすなどして1700億円に縮小した。しかし、豊洲新市場の建設工事のように、五輪施設も当初の予定価格を大幅に引き上げなければ落札するゼネコンはないといわれている。
●労務費の高騰で工事採算が悪化
こうした中、建設バブルで潤うはずのゼネコンも当てが外れた。構造的な人手不足から労務費が高騰し、各社の収益を圧迫しているためだ。業界をリードする上場スーパーゼネコン4社の13年4~12月期の決算は、公共工事の増加や都心部での再開発需要の高まりを受け、全社が増収を確保した。だが、労務費の増加が工事採算を圧迫、大林組と鹿島は営業減益となった。東日本大震災の復興事業の進捗や首都圏での大型オフィスビル建設が売り上げを牽引したにもかかわらず、営業減益となった。大林組は売上高が前年同期比11%増の1兆1250億円となる一方、営業利益は163億円で23%減り、売上高に対する営業利益率は1.4%と0.7ポイント悪化した。理由は、建設現場の人手不足が深刻化し、労務費が膨らんだためだ。
鹿島も道路工事が順調で売上高は1%増の1兆411億円だったが、営業利益は43%減の139億円と大きく落ち込んだ。営業利益率は1.3%と1ポイントも悪化。10~12月期だけでみるとマンションやビルなどを手掛ける建築部門の完成工事総利益は赤字だった。清水建設は橋梁の建設工事が伸びて、売上高は7%増の1兆190億円。東南アジアでの日系企業向けの工場建設が寄与し、営業利益は136億円と2.1倍となった。