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外食、小売り、自動車…深刻化&二極化する人手不足、急騰する時給 各社独自対策も

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ゼンショーが運営する「すき家」の店舗(「Wikipedia」より/Corpse Reviver)
 人手不足の牛丼業界で異変が生じた。ゼンショーホールディングス(HD)傘下の牛丼チェーン「すき家」の5月の既存店の売上高は、プラス8.1%となった。4月の消費増税を機に、すき家は「牛丼(並盛)」を280円から270円に10円値下げした。「値下げがプラスの一因」と同社はみている。すき家は人手不足が原因で、2月以降、約250店が一時休業や営業時間の短縮に追い込まれた。5月段階でも28店舗がアルバイト店員の不足で営業を休止した。改装中の店舗も含めると184店で営業を再開できなかった。一時休業した店や営業時間を短縮した店は、既存店売り上げにはカウントされない。これらの店を含めた全店の売上高は4%減だった。人手不足で営業を停止したことで、皮肉にも既存店売上高が大幅にアップした結果となった。

トヨタでさえ労働力確保に苦労

 トヨタ自動車が愛知県の中堅部品会社に臨時工の派遣要請をしたが、「出せる余裕がない」と中堅部品会社が断ったという話が話題になった。トヨタは全社で2000人の人員を確保する計画だ。寮は無料、10万円の特別手当がつき、社員への登用制度がある。採用でも圧倒的に強いトヨタでさえ、期間従業員を集めるのに苦労している。

 人手不足は当初、東日本大震災の復興工事を担う建設業で始まった。型枠工や鉄筋工のほか現場監督ができる人材も不足した。景気回復につれアルバイトなど非正規雇用の外食や小売業に人手不足は波及。今では地域や業種を超えて広がっている。

 全国的に広がる人手不足により、都心部ではバイトの時給が上がる一方だ。すき家は5月から、午後10時から早朝5時まで働くアルバイトの時給を250円引き上げ、1500円にした。競合他社である「松屋」の深夜帯の時給は1625円だが、それでも人は集まらない。

 アルバイトの確保が難しくなった外食各社は、独自の人手不足対策を打ち出した。スターバックスコーヒージャパンは4月以降、契約社員のほぼ全員を正社員にした。すかいらーくはパート・アルバイトを店長に登用する研修制度を新設。ゼンショーHDはすき家を全国7地域に分社化して、各地の状況に合わせた採用活動を実施する。

 人手不足の背景にあるのは、有効求人倍率が改善してきたことだ。厚生労働省がまとめた4月の有効求人倍率は1.08倍と06年7月(1.08倍)以来、7年9カ月ぶりの高水準となったが、改善は17カ月連続だ。職業別では、「接客・給仕」の倍率は2.54倍で人手不足は深刻だ。

●外食業界でも人手不足に濃淡

 すき家が人手不足を理由に営業を休止する店舗が多かったのは、同社に対してブラック企業との批判が寄せられた影響が大きかった。例えば、同業の「吉野家」など他の牛丼チェーンでは、1店舗に正社員を含む2人以上の店員が配置されるが、これに対しすき家は、アルバイト1人だけで1店舗を切り盛りする独自の運営手法「ワンオペレーション(ワンオペ)」を導入している。人件費を抑え、利益率を高めるのが狙いだ。

 そのため、すき家の店舗では注文から調理や配膳、会計、食器洗いまでを1人の店員で行うため、客が立て込むと手が回らない。さらに今年2月には、吉野家のヒット商品となった鍋メニュー「牛すき鍋膳」に習い、すき家も「牛すき鍋定食」を始めた。1食ずつ小分けして保管する「牛すき鍋定食」は、大鍋で煮込む牛丼に比べて作業の負担が大きく、これがバイトの一斉退職を招いた。