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新安倍政権、本性が試される「1月の試練」 財政危機深刻化、国債市場枯渇の恐れ

文=小黒一正/法政大学経済学部准教授
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新安倍政権、本性が試される「1月の試練」 財政危機深刻化、国債市場枯渇の恐れの画像111月18日、記者会見を行う安倍晋三首相(「首相官邸HP」より)

 第47回衆議院議員総選挙の投票が先ほど締め切られ、メディアは一斉に自民党の優勢を報じており、公明党と合わせた与党では参議院で否決された法案を衆議院で再可決可能な3分の2を確保する見通しだとの報道もある。

 消費再増税の延期(来年10月から2017年4月)が今回の選挙の争点であったが、政府は財政再建の観点から15年度に国と地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB:年収に相当する税収から利払い費以外の政府支出を除いたもの)の赤字幅を半減、20年度までにPBの黒字化目標を掲げている。このため、安倍晋三首相は選挙期間中の党首討論会等で、「歳出もしっかり見直しながら、17年4月の消費増税を前提に20年度のPBの黒字化を目指す」旨の発言をしている。

 この発言は重い。なぜなら現在、政府の借金である政府債務が対GDP比で200%を超えており、前回11月23日付記事『消費税、財政破綻回避には32%へ増税必要との試算 再増税延期で将来の税率上昇の懸念』で説明したように、30年頃が財政の限界の分岐点になると考えられるからだ。また、いかに現在の日本財政が危機的な状況であるかについては、12月に緊急出版した拙著『財政危機の深層 増税・年金・赤字国債を問う』(NHK出版新書)で説明しているが、政府債務の多くはいうまでもなく国債であり、これだけ大量の国債を発行すれば、国債価格が下落し長期金利が上昇しても不思議ではない。約1000兆円もの政府債務がある状況で長期金利が急上昇すれば、借金の利払いも急増し、財政が危機的な状態に陥るのは明らかである。

 しかし現在、長期金利は1%を切る水準で低下している。この理由は、アベノミクスの第一の矢、つまり日本銀行が異次元緩和で大量の国債を市場から買い入れていることにある。市場に流通する国債が減るため、国債価格は上昇し、長期金利は低下するからだ。

 さらに10月31日に日銀は年間のマネタリーベース(「日銀が供給する通貨」、具体的には「現金通貨+中央銀行預け金の合計」を指す)の増加額をこれまでより年間で約10~20兆円多い、約80兆円まで拡大すると発表した。12年末に約130兆円(うち保有する長期国債は89兆円)だったマネタリーベースについて、14年末に275兆円(同200兆円)に増やすことになる。また、同時に日銀は、これまで年間約50兆円のペースで増やすとしていた長期国債の保有残高を同80兆円規模になるペースで増加するよう買い入れを行う予定である。そのためには日銀が保有する長期国債のうち償還分も買う必要があり、実質的な買い入れ総額(グロス)は110兆円程度になるはずだ。そして、長期国債の平均残存期間(満期になって償還されるまでの時間。デュレーションともいう)も現状の7年程度から7~10年程度に延長する。

小黒一正/法政大学教授

小黒一正/法政大学教授

法政大学経済学部教授。1974年生まれ。


京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。


1997年 大蔵省(現財務省)入省後、大臣官房文書課法令審査官補、関税局監視課総括補佐、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。財務省財務総合政策研究所上席客員研究員、経済産業研究所コンサルティングフェロー。会計検査院特別調査職。日本財政学会理事、鹿島平和研究所理事、新時代戦略研究所理事、キャノングローバル戦略研究所主任研究員。専門は公共経済学。


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Twitter:@DeficitGamble

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