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河村康彦「クルマ、再考」(1月10日)

トヨタのミライ発売で注目の燃料電池車、重大な問題とは?本当に「究極のエコカー」か

文=河村康彦/モータージャーナリスト、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
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トヨタのミライ発売で注目の燃料電池車、重大な問題とは?本当に「究極のエコカー」かの画像1トヨタ自動車「ミライ」

 昨年12月、トヨタ自動車から世界初の量産型燃料電池車(FCV)が発売され、話題になっている。開発者が「ユーザーを選ばず、公用車として使われる可能性も考えて、このボディ形態にこだわった」と説明する4ドアセダン型で登場したこのニューモデルの名は、ずばり「ミライ」だ。

 実は「世界初の量産型FCV」というフレーズは、今から6年前に本田技研工業(ホンダ)が官公庁や一部の企業のみを相手に「FCXクラリティ」のデリバリーを始めた際にも聞かれた文言だ。それは、そもそも「量産」という言葉に定義がないこと。そして、メディアがとかく「世界初」とか「量産化」という言葉をありがたがるゆえの現象だったかもしれない。

 それでも一般ユーザーは蚊帳の外に置かれた上に、日米合わせても3年間で200台程度という販売計画にすぎなかったFCXクラリティに比べれば、「希望する人は、誰もが全国のディーラーで手に入れられる」と少なくとも建前上はそのように説明されるミライのほうが、より量産という言葉がふさわしく聞こえるのは確かだ。

 ところでそんなFCVが、実は電気自動車(EV)の一種ということは、なかなか理解されていない。燃料電池とは、燃料としての水素と酸素を化学反応させて電気をつくり出す、いわば発電機。この発電機が生み出した電気エネルギーを用いて走行するEVがFCVなのだ。

 そのため、「この先、生き残るのはEVかFCVか」といったよく耳にする議論は、そもそもその設問自体が矛盾をはらむ。同時に、FCXクラリティもミライも、主に減速回生したエネルギーをためる目的で2次バッテリーを搭載することから、FCVは既存のハイブリッド車(HV)のエンジン部分を、燃料電池へと置き換えたクルマと理解しても間違いではないのだ。

 トヨタやホンダなど古くからHVを手掛けるメーカーが、特にFCVに熱心な理由もこれで納得だろう。

●乗り心地は「EVそのもの」

 では、排気ガスは一切出さず廃棄物は少量の純水のみ、という点から「究極のエコカー」ともてはやされるミライの乗り心地はどのようなものだろうか。

 水素との化学反応を促進するため、空気を圧送する小さなコンプレッサー音がアクセル操作に応じて耳に届く以外の印象は、実は「EVそのもの」といっても過言ではない。異次元のクルマを期待した人には申し訳ないが、それがFCVの真実。加速感も、ピュアなEVである日産自動車「リーフ」などと当然類似。そこに段付き感などはなく、静粛性がすこぶる高いのも同様だ。

河村康彦/モータージャーナリスト、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

河村康彦/モータージャーナリスト、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

1960年生まれの自動車評論家。自動車雑誌「モーターファン」の編集者を経て1985年にフリーランスとなる。

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