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河村康彦「クルマ、再考」(1月10日)

トヨタのミライ発売で注目の燃料電池車、重大な問題とは?本当に「究極のエコカー」か

文=河村康彦/モータージャーナリスト、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
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 後部座席に座ると、全長が4.9mに迫るボディサイズの割に足元がちょっと狭い。そこには背もたれ後方に水素タンクを積みつつ「ゴルフバッグ3組が載せられる広いトランクスペースを確保」という、いかにも日本的な理由も影響しているに違いない。

 少し妙な、良くも悪くもインパクトの強いルックスについては、「とにかく話題となって、現状ではゼロに等しい水素の供給インフラを牽引していけることを狙ったデザイン」と、開発者は秘話を語る。

●水素ステーション整備より重大な問題

 ミライの発売でいっそう注目を集めるFCVの普及には、水素ステーションの整備が不可欠と指摘されることが多い。しかし、水素をどうやってつくるのか? というほうが、はるかに大きな問題であるはずだ。

 水素は無尽蔵である一方、実は自然界には存在しない物質。そして、その製造には石油やガスを改質する方法、水を電気分解する方法など多数が存在する。こうした多様性は大きなメリットだが、その製造段階で有毒物質を含む排気ガスを発生してしまえば、いくら「走行時」の廃棄物が水だけでも、「究極のエコカー」という謳い文句は水泡に帰してしまう。
 
 こうしたさまざまな事情を踏まえれば、現在のFCVが置かれた状況は、実は「ようやくにして一丁目一番地にたどり着いただけ」だということが理解できるはず。

 ガソリン車やディーゼル車にはそれぞれの得手不得手があり、HVやEVにもやはり得手不得手がある。だからこそ、FCVも決して“夢の自動車”ではなく、ユーザーの選択肢がひとつ増えただけ、と冷静に受け止める必要があるはずなのだ。
(文=河村康彦/モータージャーナリスト、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員)

河村康彦/モータージャーナリスト、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

河村康彦/モータージャーナリスト、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

1960年生まれの自動車評論家。自動車雑誌「モーターファン」の編集者を経て1985年にフリーランスとなる。

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