空前の軽自動車ブームが映す日本経済の変貌 ステータスから実用性へ、普通車の必要性低下
日本自動車販売協会連合会の発表によると、2014年の国内新車販売台数は556万2887台(前年比3.5%増)、うち軽自動車は227万2789台(前年比7.6%増)となった。全体に占める軽自動車の割合は40.9%と初めて4割を突破した。メーカー別のシェアではスズキが31.2%と首位、僅差の2位は31.1%のダイハツとなった。
日本で高まる軽自動車人気。その裏にある5つの理由について、マーケティングの視点から説明したい。この5つの理由を見れば、なぜ空前の軽自動車ブームが起きているかがわかるだけでなく、軽自動車市場が15年の日本経済・自動車業界を映す鏡であることが理解できる。
●理由1:高まる消費者の節約志向
最も大きな理由は、人々の節約志向が強まっていることだ。14年4月の消費税8%への増税、そして17年に計画されている消費税10%への増税により、消費者には「今節約をしなければならない」「将来に備えて節約しておこう」という心理が働いている。それに加え、なかなか増えない給料、各種税金の増加傾向などが加わり、節約志向は強いものとなっている。最近でこそ物価下落傾向にあるものの、一時的に燃料費が大幅に高騰した。これにより、自動車を所有すること自体が節約に反していると感じる消費者が増えた。
●理由2:自動車にステータスではなく実用性を求めるようになった若者
かつては新車と中古車には大きな差があったが、2つの理由から新車も中古車も関係ない時代になった。
1つ目の理由は、若者が車にステータスを求めなくなったことだ。デートで使う車はレンタカーで十分であり、もし購入するなら仲間がたくさん乗れるワゴンタイプのような実用性の高い自動車が望まれる傾向が強くなってきた。イメージとしても中古車に悪いイメージはない。中古車ではなくユーズドカーと呼ばれるようにもなったが、リユースやユーズドジーンズなどに代表されるように「古いものを活用する」ことに若者はかっこよさすら感じるようになったのだ。つまり、長く自動車業界やマーケッターが抱いていた「自動車に対するかっこよさ」の概念は変わりつつあるのだ。
もう1つの理由は、良質な中古車が増えたことだ。「古かろう、悪かろう」ではない。状態も、走行距離も、燃費も良質な中古車が増えた。またガリバーのように全国的に展開する中古車チェーンが増えたことで、中古車市場全体の質が向上した。大規模に事業展開するチェーン店にとっては、ブランドイメージがとても重要だ。1台1台の自動車、一つひとつの対応がきちんとしていなければ、すぐにインターネット上で叩かれてしまい、大きな問題へと発展する時代だ。大手中古車チェーンが増えたことは、中古車ディーラー全体の意識を向上させることにもつながっているのだ。