空前の軽自動車ブームが映す日本経済の変貌 ステータスから実用性へ、普通車の必要性低下
そもそもアジア諸国における日本車のイメージはよく、人気も高い。日本では売れなくなった中古車でも、アジア諸国に輸出され、十分に活躍している。先ほど挙げたガリバーをはじめ、アジア諸国へ進出する中古車自動車チェーンも増加している。アジア諸国の経済は加速度的に上昇しているが、まだまだ日本には及ばない。したがって日本と同じような普通自動車を販売するだけではうまくいかない。一方で、近い将来、日本市場よりも大きな市場になることは確実である。スズキの例にあるように、進出した地域で地域に即した展開を行うことは、事業拡大の大きなメリットとなる。その意味で、今の現地ニーズに即した自動車を展開することは有効だ。
一般的には、日本車のほうが中国、韓国、インド車より性能が良いといわれるが、日本基準を押し付けてはうまくいかない可能性も高い。電機メーカーをはじめ、品質では世界一といわれながら、日本企業が世界市場を制せなかった理由の1つはそこにある。日本の自動車メーカーは他業界の過ちを繰り返さないために、現地ニーズに合った自動車を開発・製造・販売することを考えるようになっている。日本の自動車メーカーが軽自動車開発に力を入れ始めた理由の1つも、ここにある。
●総括
14年に軽自動車ブームが高まったが、その流れが今年いきなり大きく変わることはない。むしろ日本市場だけを考えれば、軽自動車のマーケットシェアは、ますます高まっていくことだろう。もしかしたら10年後には、日本では軽自動車が中心となる一方、アジアでは普通自動車が中心になる時代もあるかもしれない。15年の軽自動車市場は、自動車業界のみならず日本経済を映す鏡のようなものであり、すべての業界の人々が注目するに値する市場なのだ。
(文=新井庸志/株式会社ホワイトナイト代表、マーケティングコンサルタント)