NEW
高橋篤史「経済禁忌録」

信用失墜、低報酬…食えない会計士急増 問題監査法人続出、救済策が不祥事の温床にも

【この記事のキーワード】

, ,

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
「日本公認会計士協会HP」より
 日本公認会計士協会は2月中旬、社外役員候補を探している企業向けに会計士を紹介する制度を始めると発表した。日本でも上場企業を中心に複数の社外役員が必要になる時代。そんな中、懸念されるのが、なり手不足だ。協会の紹介制度はそれに応えるものとされるが、裏を返せば会計士業界の人余りが近年ますます深刻化しているとの実情がある。


 社外役員の複数化は海外投資家の強い声を受け、金融庁や証券取引所が昨年中に「企業統治指針」(コーポレートガバナンス・コード)づくりの中で方向性を打ち出したものだ。東京証券取引所は今年6月に2人以上の社外取締役を置くことを義務化する。そうなれば一度に3000人以上の社外役員が必要となる。ただし問題はそれだけの人数をどう確保するか、である。

 会計士協会の新制度は、社外役員への就任を希望する会計士を登録してデータバンク化し、企業から希望する年齢や性別、経歴などを記入した所定の申込書を出してもらい、マッチングさせるというもの。最初、企業にはニーズに合った複数の会計士の情報が自己PRも含め匿名で伝えられ、そこから企業側が1人を指定し、相対で具体的な交渉に入っていく仕組みだという。協会は紹介後の進捗も適宜フォローするようだ。

 確かに会計制度に精通した会計士は、社外役員としてありうる選択肢なのかもしれない。事実、会計士出身の社外役員は、弁護士出身者と並び、過去それほど珍しくはない。しかし、業界挙げて企業経営の現場に人を送り込もうというのは、どこか居心地の悪さを感じさせる話だ。今回の新制度は、なり手不足に悩む企業側の問題よりは、むしろ会計士業界の収入確保策の側面が強いように感じる。

●税理士業界との縄張り争い


 かつて公認会計士は士業の中でも狭き門として知られた。年間合格者は1000人にも満たず、エリート資格ゆえ高収入のイメージも強かった。しかし、企業活動のインフラを充実させる狙いで2006年に新試験制度が導入されると景色は一変する。ピークの08年には合格者が3000人を突破、門戸は一気に広がった。とはいえ、狙い通りに会計士の活躍の場は広がらなかった。

 日本企業が会計監査のため支払う報酬は、米欧に比べ、もともと低いとされる。さらにリーマン・ショック後には既存監査先からの報酬引き下げ圧力が強まり、一方で新規株式公開(IPO)は激減した。おまけに内部統制報告制度(J-SOX)の導入による特需もなくなった。大手監査法人といえども赤字に沈み、10~11年頃には新日本監査法人や監査法人トーマツが数百人規模の人員削減に追い込まれている。その後も監査法人の利益水準は極めて低い。労働集約型産業なので、それは人件費に直結する。

 そうした窮状を見かねた金融庁は一時、「企業財務会計士」なる新資格の導入を目論んだ。会計士の知識・経験を生かし、資格者が企業の財務部門などで活躍できるようにする制度であるが、この中途半端なアイデアは国会への法案提出までこぎ着けたものの、制度導入に熱心な副大臣が去ったこともあり11年についえてしまう。

 他方、この間、会計士の近接業務である税理士との間では縄張り争いが勃発した。現在、会計士には税理士資格が自動的に付与されているが、税理士業界も人余りが深刻で反発が強まっている。数年前には会計士が税務業務を始める際に試験を課すよう、税理士業界が声高に叫んだこともあった。