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安部徹也「MBA的ビジネス実践塾」

スタバ、最後まで鳥取出店を躊躇した3つの理由 プレイス戦略の難しさを克服できるか?

文=安部徹也/MBA Solution代表取締役CEO
スタバ、最後まで鳥取出店を躊躇した3つの理由 プレイス戦略の難しさを克服できるか?の画像1スターバックスのドリップコーヒー

悲願の47都道県出店を達成したスタバ

 スターバックス コーヒー ジャパンは5月23日、47都道府県で唯一出店していなかった鳥取県に初めて出店を果たした。現在日本で1000店を超える店舗数を誇るスタバは、かねてより全都道府県での出店を目標としていたので、最後の県である鳥取に進出することにより、ようやく悲願を達成することになった。

 では逆に考えてみると、なぜスタバは今まで鳥取に進出しなかったのか。今回は、その理由を掘り下げてみよう。

プレイス戦略の重要性

 出店を計画するプレイス戦略は、店舗が顧客と接触する唯一の機会ということを踏まえれば、マーケティング戦略の中でも重要な役割を果たす。加えて、プレイス戦略による流通網の構築は慎重に行わなければならない。なぜなら、流通網には相当のコストがかかり、一旦築くと簡単には撤退できないからだ。

 例えば、大手家電量販店のヤマダ電機は、かつてその店舗数の多さがバイイングパワーにつながり、売上高2兆円を突破するなど圧倒的強さを誇っていた。だが、最近ではアマゾンなど無店舗型インターネット企業の攻勢により、逆に強みが弱みに変わってコストのかかる店舗網が業績悪化の原因となり、大量閉店にまで追い込まれたことからも、その難しさがわかるだろう。

 やはり、プレイス戦略を駆使して流通網を築く際には入念なマーケット調査が必要であり、スタバにおいてはマーケティングリサーチの結果、事業を継続させるだけの売り上げや利益水準をクリアできないと判断していたのだ。

スタバが鳥取に出店できなかった3つの理由とは?

 スタバが鳥取県に出店しなかったのは、次のような3つの不利な条件を備えていたからといえるだろう。

(1)鳥取はマーケットの規模が小さい

 鳥取は47都道府県のうち人口が最も少なく、その数はわずか57万人だ。例えば、鹿児島県鹿児島市は60万人、東京都八王子市が58万人なので、全県の人口が地方の中核都市とほぼ同じ規模なのだ。マーケットを鳥取市にまで絞り込めば、人口は19万人とさらに規模が小さくなる。やはりビジネスを軌道に乗せるためには、ある程度の顧客数が必要であり、マーケットして鳥取の魅力はおのずと低くなってしまう。

 同じ1店舗を出店するのであれば、まだ鳥取よりも魅力的な出店予定地が全国にあり、経営資源を効率的に活用する意味でも、鳥取出店の優先順位は低くならざるを得ない状況だったといえるだろう。

安部徹也

安部徹也

株式会社 MBA Solution代表取締役CEO。1990年、九州大学経済学部経営学科卒業後、現・三井住友銀行赤坂支店入行。97年、銀行を退職しアメリカへ留学。インターナショナルビジネスで全米No.1スクールであるThunderbirdにてMBAを取得。MBAとして成績優秀者のみが加入を許可される組織、ベータ・ガンマ・シグマ会員。2001年、ビジネススクール卒業後、米国人パートナーと経営コンサルティング事業を開始。MBA Solutionを設立し代表に就任。現在、本業にとどまらず、各種マスメディアへの出演、ビジネス書の執筆、講演など多方面で活躍中。主宰する『ビジネスパーソン最強化プロジェクト』には、2万5000人以上のビジネスパーソンが参加し、無料のメールマガジンを通してMBA理論を学んでいる。

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