2012年12月に第2次安倍内閣を発足した安倍晋三首相は、今年5月20日に祖父・岸信介の首相在任期間1241日を抜いて戦後歴代6位の在職日数を記録。経済優先の姿勢を掲げ安定した支持率を保ち、念願だった「戦後レジームからの脱却」の象徴である憲法改正の具体的なロードマップまで描けるようになった。しかし、こんな順風満帆に見える安倍政権だが、実はその足元が揺らいできている。
キャリア官僚が閣僚のスキャンダルを暴露
「安倍首相の政権運営スタイルである官邸主導に、キャリア官僚が静かな反乱を起こしています」
こう語るのは、政治担当の週刊誌編集者・A氏だ。
「55年体制までは、役所が法案を作り、大蔵省(現・財務省)が予算を配分する……というように官僚が政策を担い、政治家はこれを追認するだけでした。しかし、小泉政権から政治主導が強まり、安倍政権においては完全に官邸が主導権を握っています。こうした現状を面白く思わないキャリア官僚が“意趣返し”として今、国会議員のスキャンダルを次々とマスコミにリークしているのです」(同)
第2次安倍内閣では、松島みどり法務大臣、小渕優子経済産業大臣、西川公也農林水産大臣の3人が「政治とカネ」の問題で辞任しており、第1次安倍内閣時代を含めると、7人もの大臣が辞任している。このほか、先日「週刊ポスト」(小学館)が高市早苗総務大臣の融資口利き疑惑を追及したことも記憶に新しいだろう。これらもすべて、キャリア官僚のリークが発端なのだろうか?
「辞任した閣僚については、官僚のリークが発端というわけではないようですが、報道後に、『実はこういう話もあるんです』と、キャリア官僚がメディアに情報を持ち込んでいたと聞きます。また、中川郁子農水政務官の“路上キス”については、実際に執務室や公用車でラブラブに電話する政務官にあきれた農水官僚のリークが発端でスキャンダルになったと聞きました」(同)
スケジュールや人間関係まで把握
また、大手新聞の政治担当記者・B氏はこう分析する。
「大臣といえども国会議員ですから、公務以外のスケジュールについても議員秘書が受け持ちます。しかも、議員秘書に限らず、役所から派遣された秘書官や秘書課もスケジュールを把握しています。そして何より大臣本人が、自身の“偉くなった姿”を自慢しようと多くの支援者を大臣室に呼び入れるため、スケジュールだけでなく、彼らの人間関係もまた、役所に筒抜けになるのです。
安倍内閣で辞任した閣僚を見ればわかりますが、農水省や法務省など、いずれも安倍首相が重視していない役所の大臣ばかりです。官僚として出番が減っただけでなく、どうしようもない大臣を相手にしなければならないとあれば、憂さ晴らしにスキャンダルをリークしたくもなるのでしょう」
高い支持率を背景に安保法制から憲法改正に突き進む安倍首相。政権を支えるはずのキャリア官僚から反旗を翻されているとは、思ってもみなかったのではないか。飼い犬に手を噛まれた首相率いる現政権のスキャンダルは、まだまだ続きそうだ。
(取材・文=山野一十)